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 西瓜王/ダニエル・ウォレス

内容(「MARC」データベースより)
孤児として育った少年が過去を知るために戻った母の故郷。そこで町の人びとが話してくれたのは、選ばれた女に童貞を捧げ、豊かな実りをもたらすという伝説のスイカ王の話。嘘と現実とほんとうの愛をめぐる現代のおとぎ話。


タイトルの響きから、かわいらしいファンタジーかと思っていたら、これが大間違い。町の古くからの祭りで、「選ばれた女に童貞を捧げる」というのは、思いのほか大変なことであり、また悲しくもあり、実際選ばれた人間は、冗談じゃない!という感じだろう。

『ビッグ・フィッシュ』 でも描かれていた「嘘」が、ここでも物語のスパイスのように用いられているが、テーマがテーマだけに、『ビッグ・フィッシュ』のような爽やかさはない。

主人公の少年も、状況に流されやすいタイプのようで、今ひとつ捕らえどころがないし、母親と祖父(母親にとってみれば父親だが、少年の父親でもある)の関係の秘密がわかった頃には、何ともやりきれない気持ちになっていた。

『ビッグ・フィッシュ』の父親と、この作品の祖父は、同じ嘘つきな人間である。何箇所か、これは同じ人物ではないかと思える部分があり、実在のモデルがいるかどうかはわからないが、ウォレスが気にいっているキャラクターなのだろうと思った。嘘を並べ立てている場面はユーモアもあっておかしいのだが、やはりこの話は暗い話なのだ。

2004年09月15日(水)
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