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 A Handful of Dust/Evelyn Waugh

※4月から7月までのNHKラジオ「原書で読む世界の名作」(講師:横浜市立大学名誉教授・日本大学教授/小野寺 健)で使用したテキストだが、実際に使ったのは abridged 版。リンクは Unabridged 版。

※8月から11月までは、James Joyce 『Dubliners』


週に1回30分の講座なので、前のことはどんどん忘れていくという情けない状況なのだが、イーヴリン・ウォーは、前にも『Brideshead Revisited』を同じ講座で読んでいて、英文も解釈も難しいと感じていた作家である。

今回も同様で、ウォーの風刺は、英文を読んだだけでは理解できなくて、講師の説明がなければ、まるで気が付かず、何の引っ掛かりもかんじずに読み飛ばしてしまうといったことがしばしば。

ウォー自身は上層中産階級に属しているのだが、貴族的な文化に憧れており、そうした社会を描いている小説が多いようだ。しかし、自分自身は貴族でなかったことを非常に残念がっていながら、貴族社会への風刺は、かなり辛らつである。

この小説では、そうした貴族社会の退屈さや、浮気や離婚といったことが、何の感情も伴わずに、事務的に処理されてしまう有様などが描かれていて、それはそれで一種の驚きをもって読んだが、そういった描写の中に、貴族とはいえ、実に下世話な生活の様子もまた描かれている。それがあからさまに描かれているのではなく、独特の言い回し、よくよく読み込まなければ分からないような書き方をしているので、それこそ、解説を聞かなければ、そういうことだったのかと気が付かずに通り過ぎてしまう。

登場人物もそれぞれに特徴があり、一人一人の描写もまた上手いと思う。そして、彼らのそれぞれの行く末というのも、なかなか興味深いのだ。特に、この小説の舞台となった貴族の当主であった、ラスト氏の最後は、恐ろしく不幸なのだが、反面、笑えてしまうものでもある。

ブラジルに旅行に行ったまま行方不明とされ、死んだと思われて、墓まで建てられるのだが、実はブラジルの奥地である人物に捕まり、イギリスに帰してもらえなくなっているというのが真相。しかし、その人物は、探しに来た人間に、ラスト氏は死んだと伝えてしまう。

ラスト氏が囚われている理由は、「ディケンズを読んでほしいから」という、ただそれだけのことなのだ。そこに何か狂気のようなものを感じて、ぞっとする最後となっている。


2004年07月28日(水)
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