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 Time Stops for No Mouse (A HERMUX TANTAMOQ ADVENTURE)/Michael Hoeye

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ネズミの時計屋、ハーマックス・タンタモクは、好きにならずにはいられないキャラクターだ。彼は世界中のチーズの絵がプリントされたフランネルのシャツを着てくつろぎ、テントウムシをカゴに入れて飼い、毎晩、世界中のあらゆるものに「心からありがとう」の日記を書く。

ヘルムクスは広い心の持ち主だ。そして、その心は今、怖いもの知らずの女流飛行士、リンカ・ペルフリンガーへの熱い思いでうずいている。リンカは先日、思いがけず彼の店にやってきて、腕時計を大至急修理してほしいと言ったのだった。ヘルムクスには知るよしもないが、この威勢のいい女冒険家と言葉を交わしたほんのひとときが、彼の人生を永遠に変えることになるのだ。

リンカから連絡がないまま1週間が過ぎると、ヘルムクスは心配するべきか腹を立てるべきかわからなくなる。そしてリンカにあててちょっとだけ不機嫌な手紙を書き、それからやけっぱちの手紙に書き直し、それから優しすぎず冷たすぎない手紙に書き直して、返事を待つ。だが、相変わらず音沙汰はない。不愉快な隣人(けばけばしい装いで、やけに気取った美容界の大立者トゥッカ・メルトスリン)と出くわしても、芸術家の友人ミルリンと明るく過ごしても、ヘルムクスにとりついた最近の不安は、片時も心を離れない。

黄色い目、薄い唇、毒のある言葉が印象的なドブネズミが彼の店にやってきたとき、ヘルムクスの最悪の不安は決定的になる。ドブネズミは不気味な笑みを浮かべて言う。「リンカ・ペルフリンガーの時計を受け取りにやってきました」。大事な人の時計を、預り証を持たない相手に単純に引き渡すわけにはいかなくて、ヘラムクスはドブネズミのあとをついていき、けっきょくリンカの家まで行ってしまう。すると、そこで見たものは…。リンカは誘拐されたのか? ヘルムクスが(何が彼をそこまでさせたのかはともかく)大胆にも彼女の家に侵入し、テウラボナリの国からの謎めいた手紙とひっくり返ったスパイシーな香りの植物の苗を見つけるあたりから、ストーリーは込み入ってくる。

その晩、ヘルムクスはペットのテントウムシに語りかける。「これから僕の新しい人生が始まる。探偵としての人生か、囚人としての人生がね。どちらになるかは時がたてばわかる。もしも、囚人としての人生となったなら、檻をどうやって飾りつけたらいいか、君にアドバイスを求めるよ」。間もなくヘルムクスは、こうした手がかりが、美容界の大立者トゥッカと関連があるとにらみはじめる。内服用ビン入り「永遠の若さの素」を調合しようとしているトゥッカは、ヘルムクスを自分の計画に巻き込もうとしていたのだ。

それから先は、心優しいヘルムクスが探偵の仕事を通して想像を絶する世界に足を踏み入れていき、次々に、スパイ、泥棒、殺し屋、裏切り、青春の泉、ヘビ、感動的な救出劇とかかわりながら、ネズミの毛もよだつ体験を重ねていく、と言うくらいにとどめておこう。しかし、そんな目に遭いながらもヘラムクスは、世界に対する感謝の気持ちを忘れない。「ありがとう、かどの食料品屋さん。ありがとう、サンドイッチにハニーフィズ。ありがとう、恐ろしいニュースに危機一髪の命拾い。ありがとう、ショッピングカートにショッピングバッグ。ありがとう、忠実なペットたち、ありがとう、勇気ある男性冒険家たち(と女性冒険家たち)」

読者はきっと、ヘルムクスのひたむきで好奇心あふれる性格と生きる情熱にひきつけられ、スリルとサスペンスに満ちた大冒険から目が離せなくなることだろう。(Karin Snelson, Amazon.com)

<翻訳>
ネズミの時計屋さんハーマックスの恋と冒険〈1〉“月の樹”の魔法/マイケル ホーイ (著), Michael Hoeye (原著), 雨沢 泰 (翻訳)
単行本: 345 p ; サイズ(cm): 182 x 128
出版社: ソニーマガジンズ ; ISBN: 4789720535 ; 1 巻 (2003/06)
内容(「MARC」データベースより)
ネズミの時計職人ハーマックス・タンタモクは、ある日壊れた懐中時計を持ちこんだ女飛行士リンカにすっかり心を奪われてしまう。しかし、リンカは行方不明に。さあ、どうするハーマックス?! 恋と時間の大冒険がはじまった!



特に好奇心に満ちているわけでもなく、平穏な毎日を楽しんでいる一匹の時計職人のネズミのハーマックスは、彼の店にやってきた、女飛行士リンカ(ネズミ)に恋してしまったために、思いもかけない冒険をすることになる。

うまくまとまっている話だと思うと同時に、特に新鮮でもなく、これといって感慨もない。児童向けの本かと思ったが、これは作者が自分の妻に向けて送ったEメールからできあがった話だとか。ということは、児童向けということでもないのだろう。

ちょっと悲しいのは、愛するリンカのために大冒険をしたというのに、結末はハーマックスの思ったようにはいかなくて、なんともお気の毒という感じだ。モグラの仕掛けた殺人マシンが、時計仕掛けというのも、時計職人の物語らしい。

殺されそうになったにも関わらず、悪漢のモグラも本当はいいモグラだったんじゃないかなどと考えてしまうハーマックスは、根っからお人好しなネズミなんだろう。だから失恋しても、リンカの幸せを祈っていたりする。

他にちょっといい話的なエピソードも混じって、たしかにうまくまとまっているのだけれど、この続きをまた読みたいと思うほどではなかった。

ネズミの時計屋、モグラの悪漢などなど、動物が擬人化された話だけれど、ネズミとモグラといえば、どうしてもケネス・グレアムの『川べにそよ風』を思い出してしまう。あの作品と比べたら、どうしたって負けるだろう。

2004年05月06日(木)
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