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 魔法の声/コルネーリア・フンケ

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ドイツの人気児童文学作家コルネーリア・フンケが、「書物と文字」をテーマに紡ぎだした長編ファンタジー。べネチアを疾駆するストリートチルドレンの活躍が痛快な『どろぼうの神さま』、若き竜と悪しきモンスターとの闘いを壮大なスケールで描いた『竜の騎士』に次ぐ、3冊目の邦訳となる。600ページを超える大著ながら、大胆な発想と古典的なファンタジーの要素を巧みに取り入れた物語は、読み手の心を最後までひきつけて離さない。

読書が大好きな12歳の少女メギーは、本の修繕を仕事にする父親モーと2人で、ひっそりと暮らしていた。ところがある雨の夜、ひとりの怪しい男が庭先に現れてから、メギーの運命は一転していく。「ホコリ指」という奇妙な名前の男は、モーを「魔法舌」と呼び、「あれを手にするためなら、やつはなんでもするぞ!」と警告を発する。親子の身には、想像もつかない危険が近づいていたのだ。モーの秘密、ホコリ指の正体、母親の行方、そして恐ろしい敵カプリコーンとは。メギーは、いくつもの謎を抱えながら、モーとともに南へと旅立つ。 

物語の鍵となるのは、書物の中の登場人物たちを現実の世界へと呼びだす魔法である。『ピーター・パン』のティンカーベルが本から飛び出したり、逆に物語の中に人間が消えてしまったりと、書物の世界と現実とがスリリングに交錯する様は、同じくドイツのファンタジー作家ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』を彷彿(ほうふつ)とさせる。また、物語に触れる喜びや、想像力が欠如しつつある世界への警鐘が込められているのも、エンデ作品に共通する点といえるだろう。古今東西の名作のエッセンスや、ファンタジーの持つ普遍的なメッセージに存分に浸りながら、文字の生み出す不思議な力に、じっくりと身をゆだねてほしい。(中島正敏)

内容(「MARC」データベースより)
少女メギーの父は、本の中の登場人物を現実世界へ呼び出す魔法の力を持っていた。その為、悪と立ち向かうはめに! 物語の中にのみこまれてしまった母を助け出せるのか? 本をめぐるハラハラドキドキの冒険ファンタジー。



この本は、訳がいやで、かといって原書はドイツ語だし、とりあえず日本語で読むしかないのだが、作者のアイディアは面白いのに、残念。しかし、フンケの作品には、必ず強がりを言って大騒ぎする人物(または生き物)が登場するので、それがこの人の作品の特徴でもあると言えるのだろうが、今回は、いい大人がその役割をしているのがどうも・・・。

本の中の人物を呼び出すというアイディアは、『文学刑事サーズデイ・ネクスト』で、すでに体験済みだが、そもそもこちらは児童書だから、ここでそれを比較するのも意味がないのでやめておくが、言わずと知れた・・・という感じ。このテーマは、深く考えると頭が痛くなりそうなのだが、それにしても、ちょっと疑問がありすぎ。

ただ、主人公メギーと、その父親が秘密の通信をするのに、『指輪物語』の「エルフ語」を使ったというのには驚いた。それは、トールキンが言語まで架空のものではなく、実際にも使えるほどしっかり作り上げたという証明にもなる。


2004年04月24日(土)
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