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 ミラー・ドリームス/キャサリン ウエブ

内容(「MARC」データベースより)
華麗なる魔法使いリーナン、夢見人レナ。美しき者たちがパラレルワールドを駆け抜ける! 眠っている間、人間の魂がここではないどこかに漂い出す…。世代を問わず楽しめるファンタジー。14歳の少女が書いたデビュー作。

※画像は原書 『Mirror Dreams』(Amazon.co.uk)


14歳の少女が書いたという鳴り物入りのファンタジーだが、14歳にしてはよく書けていると思う。しかし、やはり14歳だなと思う部分もあって、いいのか、悪いのか、判断がつかない。年齢を考えれば、すごい!とも思うし、年齢に左右されるのもおかしいだろうし。

地球の人間が寝ている時に夢を見て作り出した国が、主人公リーナン・カイトのいる国で、人間は「夢見人」として、その国を訪れるのだ。逆に、カイトたちは、夢を見たときに地球を訪れているという。そして、カイトの国の首都ともいうべきところが「安息郷」である。その安息卿を悪夢が襲い、王を殺してしまう。

その頃、地球では昏睡状態に陥る人が続出し、このままでは地球と夢の国の双方とも滅びてしまうというわけで、「偉大なる大魔法使い」リーナン・カイトが立ち上がり、悪夢の魔王に挑むという話。

この作者は、ずいぶんたくさんの本を読み、勉強もちゃんとしているんだなという印象を受ける。使用している言葉などから、理科系が得意なのかもと思うが、コンピュータの影響も否定できない。どこかゲームオタクっぽいところが見え隠れする。

一番残念なのは、リーナン・カイトのキャラクターだ。ちょっと斜に構えたクールな感じのカイトだが、大人はそんなことしないよと思う部分がちらほら。500年も生きている大魔法使いの割には、妙に子どもっぽく、威厳も何もない。そういうところが、やっぱり14歳だから・・・と思わせる原因だろうと思う。

それと、歴史などもよく勉強しているらしいのはわかるのだが、物語のイメージが統一されていない。現代の話なのか、中世くらいが舞台なのか、夢だからなんでもありなんだろうが、そのあたりがイメージ的にまとまりがないし、読んでいる側としては、どういう画像を想像すればいいのか迷うところだ。これは翻訳のせいもあるかもしれない。日本語の選び方が統一されていないせいで、現代なのか、はたまた中世なのか、と思ってしまうのだろう。

また、「黒騎士」というのが出てくるが、「黒騎士」とはイギリスでは「リチャード獅子心王」のことだ。この言葉を悪役のほうで使ってほしくなかったなあ。それに、中国のイメージを語っているところで、「キモノ」や「サムライ」が出てくるのも、このインターネット時代に、日本と中国はまだ混同されているのか、とため息をついてしまった。

細かいところをあげればきりがないが、全体として見て、彼女の想像力はすばらしいと思う。大人の書いた下手なファンタジーよりは、全然ましだ。ただ、主人公のキャラが、大魔法使いにしては幼稚で耐えられないので、2作目までは読まないだろうと思う。見習いの若い魔法使いという設定なら、まだ受け入れられるだろうと思うが。

それと、作者は完璧にファンタジーの世界に入り込んでいないと思う。読者はたびたび現実に引き戻され、その世界に浸りきることができない。夢の世界のようでいて、コンピュータの内部のような感じもするのだ。


2004年04月18日(日)
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