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■ I Capture the Castle/Dodie Smith
内容(「MARC」データベースより) 1930年代、イギリス。作家志望の17歳の少女カサンドラの目を通して、古城での生活や風変わりな家族たち、はじめての恋を日記の形式でつづる。ロマンスいっぱいの物語。
内容(「BOOK」データベースより) 父は作家、継母は画のモデル。17歳の少女カサンドラは、個性的な家族とイギリスの古城で暮らす。決して便利とはいえない生活を豊かな想像力で楽しむ彼女と、心底いやになっている姉ローズの前に、突然二人のハンサムなアメリカ人青年があらわれた。何かがはじまる予感。
※ドディ・スミスは、『The Hundred and One Dalmatians』(101匹わんちゃん物語)の著者。
<登場人物>
●カサンドラ─お城での貧乏暮らしを豊かな想像力で楽しむ知的好奇心いっぱいの17歳。将来の夢は作家。 ●ローズ─愛らしい外見とうらはらの型破りなおてんば。貧乏が心底いやになっている21歳。 ●スティーヴン─カサンドラを一途に思う美青年。お城の雑用をひとりでこなす生活力のある19歳。 ●サイモン・コットン─ハンサムで裕福なアメリカ人青年。遺産相続で、お城の所有者となる。弟とともに突然お城に現れた。文学好きのスマートな青年。 ●ニール・コットン(サイモンの弟)─皮肉屋だけど、気持ちはやさしい、さっぱりした男らしさが魅力の青年。ローズとは犬猿の仲。 ●ジェームズ・モートメイン(パパ)─『ヤコブの闘い』というベストセラーを書いた有名な作家。ママと喧嘩をしてナイフをふりかざし、監獄に入れられる。それ以来、1冊の本も書いていない。 ●トパーズ─ママ亡き後、パパの2番目の妻となる、元モデル。自然との対話が得意だが、本人も気づいていない一番の得意は、家事。 ●トーマス(弟)─冷静で頭脳明晰で勉強好きな15歳。大人のように複雑な見方はせず、単純明快な答えを出す。 ●ミス・マーシー─いつも図書館の本を持って来てくれる、心優しい先生。 ●司祭様─カサンドラにわかりやすく宗教を教えてくれる優しく親切な神父。 ●リーダ・フォックス=コットン─コットン家の親戚で写真家。スティーヴンの写真を撮る。 ●オーブリー・フォックス=コットン─リーダの夫。建築家。 ●ミス・ブロッサム─カサンドラとローズが時々話しかける洋裁用のボディ。 ●エロイーズ─愛犬。メスのブルテリア。 ●アヴェラール─愛猫。
これは楽しい本だった。 主人公カサンドラのパパが、壊れかけたゴッドセンド城にぜひとも住みたいと言い出し、40年契約で借りたはいいが、パパが本を書かなくなってから収入もないため、ひどい貧乏暮らしを余儀なくされるのだが、そんなことにはめげないカサンドラ。古城を取り囲むイギリスの素晴らしい自然の中で、日記を書き続け、様々な出来事をみつめることによって、成長していく。
遺産相続によって新しくゴッドセンド城の持ち主になった、アメリカ人のサイモンと弟のニールの出現により、古風で貧しいカサンドラの生活に変化が訪れた。姉のローズがサイモンとの結婚を決めたことにより、生活もいくらか豊かになり、カサンドラにも恋の兆しが・・・。
けれども、事態は思わぬ方向に進んでゆき、それぞれがそれぞれの思惑で傷ついたりするのだが、カサンドラ自身も、「夏至のイヴ」の祭りやミス・ブロッサムとのおしゃべりなど、少女時代の習慣から脱皮し、最後には日記を書くことも卒業するという、切なくも楽しい少女の成長物語が描かれている。
あまり内容を書いてしまうとネタバレになってしまうので、あらすじはこれくらいにしておくが、私が一番好きな登場人物は、スティーヴンで、カサンドラにはぜひともスティーヴンと結ばれて欲しかったなあ・・・と。でも、カサンドラは17歳。これから先はどうなるか誰にもわからない。今のところは正しい選択をしたのだと思える。
裕福なアメリカ人であるサイモンとニールもいいのだが(性格も悪くないし)、何があっても絶対に守ってくれそうなスティーヴン(しかも美青年)は、個人的には捨てがたいなあ。それと、恋愛の対象ではないが、弟のトーマスもなかなかいい感じ。
こう書きながら思い起こせば、この物語の登場人物は、皆いい人ばかりだ。カサンドラの性格が、もともと人間のいいところばかりを見る性格なのか、はたまた本当にそういう悪意のない人ばかりが集まったのか、ともあれ、誰をとってみても、気持ちのいい人間ばかり。ただし、スティーヴンの写真を撮るリーダだけはだめ。カサンドラへの恋が実らないと思って、リーダと関係を持ってしまうスティーヴンにもがっかりだったが、それでもスティーヴンはずっとカサンドラを思って、カサンドラのためにいろいろしてくれているのだから、まあ、許してあげよう。
登場人物を長々をあげたが、犬や猫に至るまで、作者のドディー・スミスは、愛情を持って描いているのだ。スミスの描くイギリスは、豊かで美しい自然に囲まれていて、非常に素晴らしいものだ。それだけでもこの本を読む価値はあると思うが、作者が人間や動物、草木の1本に至るまで、惜しみない愛情をそそいでいることが伝わってきて、ほのぼのとした気持ちになる。
また、初めて恋をしたときのどきどき感や、実らぬ恋に身を焦がす切ない感情が、とてもよく描かれている。サイモンやニール、はたまたスティーヴンとの恋の行方はどうなるのか?それが知りたくて、どんどんページをめくってしまう。いまどきの「ブリジット・ジョーンズ的」な恋愛物語ではなく、正統派の伝統的な(またはオースティン的な)ロマンスだと思うが、こういう素直な気持ちが、とても新鮮に感じられた。
2004年04月12日(月)
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