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 ルームメイツ/マックス・アプル

内容(訳者あとがきより)
本書は、著者であるマックス・アプルが祖父のロッキーと107歳まで付き合って、その死を見取るまでの美しく、感動的な実話だ。アプルは、リトアニア移民の祖父と文字通り生まれたときから付き合って、ほとんど片時もはなれることがなかった─ずっと、“ルームメイト”だった。

マックス・アプルは、このおじいさんといっしょに暮した40数年のあいだに、初等、中等教育を卒業し、ユダヤ人の成人式であるバル・ミツバーを受け、大学へ入り、ヒッピー運動にかかわり、愛する人を見つけ、大学院に入って作家を目ざし、家の大黒柱の父親を失い、事件に巻き込まれて半身付随になった友人の世話をやき、結婚し、90歳を越えた祖父を伴って暑いテキサスへ引越し、子供(ロッキーのとては曾孫)をもうけて精一杯愛情を注ぎ、そしてさらなる悲劇に見まわれるという悲喜こもごもを体験した。

※画像は原書『Roommates: My Grandfather's Story』/Max Apple


マックス・アプルは1945年、ミシガン州グランド・ラピっズの生まれで、幼年時代から作家を目ざし、1976年に短編集「The Oranging of America」でデビュー、78年に「Zip」、その後「Free Agents」を書いたが、本書にあるように作家活動の中断を余儀なくされた。1986年にはグッゲンハイム基金の奨学金を得て、「Propheteers」を発表。現在はライス大学の英語科の教授で、『エスクワイア』、『ニューヨーク・タイムズ』、『アトランティック』、『アメリカン・リビュー』などに寄稿している。(1994年10月)
─訳者あとがきより


必ず別れが来るとわかっている小説を読むのは辛い。が、こういった死に向かってそれまでの思い出が綴られた話は多い。そして例外なく、死が訪れたときには涙する。人間は生まれたときからすでに死に向かっているわけだが、その人がどんな風に生きてきたか、周囲の人間にどんな影響を与えてきたかで、その死の部分で感じることは大きく違う。

本書も多くのそういった本と筋書きは大差がないと思うが、作者のマックス・アプルの変に感傷的にならない語り口と、何より祖父ロッキーのキャラクターが、暗くなりがちな話を救っている。だいたいこういった思い出話の主人公になる人物は、どこか偏屈で頑固であり、自分の信念を曲げない生半可でない人物が多いように思う。このロッキーもそういった愛すべき人物で、時にはユーモラスであり、時には哀感を感じさせる人間らしいキャラクターで、彼の死は107歳という大往生ではあるが、読んでいるほうも非常に残念な思いで、胸にこみあげてくるものがある。こんなおじいさんなら、もっともっと長生きしてほしいと思うし、ましてや片時も離れなかった孫のマックス・アプルにしてみれば、どれほどの思いか想像に難くない。

本にするにあたって、多少の脚色はあるかもしれないが、思い出を特別美化するわけでもなく、淡々と書かれているところにかえって真実味があり、好感が持てた。ここに登場する人達は、それぞれに大変な思いをしているのだろうが、読後は、なんとなくほのぼのとした暖かい気持ちにもさせられた。

2003年10月19日(日)
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