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 Coraline/Neil Gaiman

内容(「MARC」データベースより)
秘密のドアの向こうの世界に住む、真っ黒なボタンの目の両親たちとの生活を楽しみ始めたコラライン。しかし、やがてその世界に閉じ込められていることに気づいて…。傑作ファンタジー。


「Caroline」ではなく「Coraline」という名前の女の子が(なかなか「Coraline」と呼んでもらえないのだが)、ある日大きな家に引越してきた。その家にはほかにも住人がいて、なんだか奇妙な感じ・・・というわけで、出だしから奇妙な雰囲気を漂わせているお話。Dave McKeanの挿絵も不気味でマジカルなムード満点だが、ゲイマンの文章も好き。例えば、

She found a hedgehog, and a snakeskin (but no snake), and a rock that looked just like a frog, and a toad that looked just like a rock.

なんていうようなところは、レモニー・スニケットのように感覚的にひねくれていていい。物とか言葉にこだわるといった感じがマイケル・シェイボンのようでもあり、ジョン・アーヴィングのようでもある。そういったこだわりが、「Caroline」ではなく「Coraline」という名前に反映されているのだろう。

しかし、ボタンの目の両親に初めて会ったときのコララインのリアクションがなさすぎ。疑問を抱きながらも、その場ですぐにボタンの目のお母さんが作ったご飯を素直に食べちゃうなんて、ちょっと信じられない。たしかにそっちの世界では、ボタンの目のお母さんは本当のお母さんより料理は上手だし、自分の部屋だってかなり良くなってる。

でも、コララインはそっちの世界を楽しんではいない。本当の世界よりいいかも・・・とちらっと思ったのは事実だが、楽しんでいたわけじゃない。結局、不気味なボタンの目のお母さんとの戦いに勝って元の世界に戻るコララインだが、深読みすれば、よそから引越しをしてきて、新しい学校に転校する前の不安な気持ちが夢を見させたといった状況も想像できなくはない感じ。にしても、ボタンの目のお母さんの豹変ぶりは怖い。手だけが動き回るなんて、アダムス・ファミリーか!

個人的にニール・ゲイマンには注目していて、この本はとても期待して読んだのだが、ファンタジー特有のわくわくする感じはいつ訪れるのだろう?と思っているうちに終わってしまい、彼にとってこの長さは中途半端じゃないのか?と思った。ゲイマンの作品はまだこの1冊しか読んでいないので先入観を持つのは避けたいが、面白いファンタジーは最初からわくわくするものだ。

また、読んでいる間に疑問がたくさん出てくる。ファンタジーだからと片付けてしまえば簡単だが、その疑問が解けないうちに物語が終わってしまうし、書き方によっては魅力的になると思われる登場人物たちも、十分にいかされていないような気がする。コララインの恐怖にもめげないひょうひょうとしたキャラは好きだし、ゲイマンの文章そのものも気に入っているので、とても惜しい。

2003年10月18日(土)
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