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 タイムクエイク/カート・ヴォネガット

2001年2月13日、時空連続体に発生した異常―タイムクエイクのために、あらゆる人間や事物が、1991年2月17日へ逆もどりしてしまった。ひとびとはみな、タイムクエイクの起きた瞬間にたどりつくまで、あらためて過去の行為を繰り返さざるを得なくなる。しかも、この異常事態が終わったとき、世界じゅうは大混乱に・・・!SF作家のキルゴア・トラウトやヴォネガット自身も登場する、シニカルでユーモラスな感動の長編。
―カバーより

『サロン・ドット・コム』に、ジョージ・ソウンダーズ(『パストラリア』『フリップ村のとてもしつこいガッパーども』)と似ているとあったので、え?と思っていたのだけど、たしかに「クソ」がいっぱい出てくるところは似ているかもね。「クソったれ」まで出てくるし、下半身ネタも少なくない。それでもソウンダーズより品があるように感じるのは、年の功?年齢を考えれば当然かもしれないけど、ヴォネガットの広い知識も重みをそえているし、やはりここにも育ちの違いというものが出てきているんだろうと思う。

それより何より、ヴォネガットの奇想天外さは、ソウンダーズの小説とは全然違う世界だと思う。一言ではとても説明できないが、ヴォネガットの分身のような、「長らく絶版をかこっている老SF作家キルゴア・トラウト」(架空の人物)には、奇天烈ではあるけれど、尊敬さえ覚えるほど。ヴォネガットのエッセイかと思うと、トラウトのSF短編小説になったり、その境界線があいまいなところが奇妙な世界をかもし出している。しかし、そんな中からも、ヴォネガットの家族への愛情と、社会風刺が存分に感じられた作品だったと思う。

一応長編小説ということになっているけれど、ありきたりの枠にはまらない不思議な作品。個人的には、彼の持ち出してくるモチーフに、その都度びっくりしたり、感嘆したり、共感を覚えたりして楽しかった。


2003年07月13日(日)
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