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 ストリップ・ティーズ(上・下)/カール・ハイアセン

ストリップ・ティーズ(上)
ある晩、フロリダのストリップ酒場で、ダンサーのエリンをめぐって、ちょっとした騒ぎが起きた。よくある酔客どうしの喧嘩だが、一つだけ普通でないことがあった。加害者が、なんと下院議員のディルベックだったのだ!エリンに惚れている常連客キリアンは、酒場での醜態をネタに議員を脅迫し、娘の監護権をめぐって前夫と裁判を続けているエリンに、有利な判決が下りるよう圧力をかけさせる。ところが、キリアンが何者かに殺され、エリンの身にも危険が・・・。
─カバーより


少し前に「HOOT」で初めて読んだハイアセンだが、出会いは昨年から。紀伊国屋の洋書バーゲンで、買おうかどうしようか迷ってやめた記憶がある。でも、それ以来気になっていた作家。その時の勘が正しかったようで、ユーモアあふれるミステリーは結構いける。

ストリップ酒場の名前が「うずうず女」とか「肉農場」とか、ここまで訳さなくても・・・と最初は思ったが、これがあとあと笑いを誘うようになるから面白い。けっしてハードボイルドタッチのミステリではなく(絶対に!)、人が何人も殺されているというのに、笑いながら読んでいる。

ただ、主人公のストリップ嬢エリンは、小説の中では魅力的だと思うのだけど、映画化されてデミ・ムーアが演じているので、どうしてもデミの顔が浮かんでしまっていけない。本のカバーにも、妙に筋肉質なデミの写真がいくつか載っていて、そのイメージを頭から追い払うのにひと苦労。デミ・ムーアはもともとかわいらしい顔つきだから、マッチョなストリッパーやチャーリーズ・エンジェルの悪役なんて似合わないと思うんだけど、ブルース・ウィリスに悪影響を受けてしまったんだろうか。というか、そもそもこのエリンは気が強くてタフではあるけれど、マッチョなストリッパーじゃないのよ。

個人的には事件の捜査をしているガルシア刑事と、「うずうず女」の用心棒シャドが好き。シャドは強くて怖いけど実は優しいという感じの、ボブ・サップみたいな黒人の大男。


ストリップ・ティーズ(下)
ガルシア部長刑事や酒場の用心棒シャドの力を借りて、なんとか窮地を切り抜けようとするエリン。そこへ、悪徳弁護士モルディカイやエリンの別れた夫ダレル、フロリダの砂糖産業を牛耳るロホ一族やFBIなどが入り乱れ、さらにディルベックがエリンに一目惚れしてしまうというおまけまでついて、事態は思わぬ方向に進展していく。はたして、エリンと娘の運命は・・・?常夏のフロリダで巻き起こる大騒動を軽快なタッチで描く傑作ユーモア・ミステリー。
―カバーより


後半になって、ハイアセンのユーモアが一段と冴えてきた。エリンの別れた夫が娘を連れ戻そうと躍起になるところが怖い。実のところ彼は殺人など犯せる人間ではないのだが、最後にはクスリでわけがわからなくなって殺人を犯してしまう。その後、この夫が死ぬところはあまり深く考えないほうがよさそう。このあたりが一番怖い。

何人もの人が殺されているので、殺人犯はひとりではないのだが、犯人は皆死んでしまい、最後はハッピーエンドとなるのだが、登場人物のその後というのがまたおかしい。例えばエリン。娘の永久監護権を手にし、二人でオーランドに移り住み、ディズニー・ワールドでシンデレラの一番上の義姉として夜間ダンスの仕事についた(昼はFBIでデータ入力をしている)。普通、物語の主人公で美人でスタイルもいいとなれば、シンデレラだろうと思うが、一番上の義姉の役というのがハイアセンらしいユーモア。

ちなみに新しい名前を考えていた「うずうず女」の次の名前は「抱腹絶倒」、新経営者になってまた名前が変わり、「裸の本質Ⅱ」となった。先の責任者であったオーリーはその後、「生で食べて」というトップレス・オイスター・バーを開店したというから大笑いだ。

猥雑なサウス・フロリダを舞台に、それこそ抱腹絶倒の事件が繰り広げられるのだが、アメリカの政治に対する風刺もぴりっと効いていて、非道な殺人事件を扱っていながらも、どこかほのぼのとしたものを感じるのは、「HOOT」でも描かれていたハイアセンのひとつの個性なのではないかと思う。



2003年07月08日(火)
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