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■ 草の竪琴/トルーマン・カポーティ
内容(「BOOK」データベースより) 両親と死別し、遠縁にあたるドリーとヴェリーナの姉妹に引き取られ、南部の田舎町で多感な日々を過ごす十六歳の少年コリン。そんな秋のある日、ふとしたきっかけからコリンはドリーたちと一緒に、近くの森にあるムクロジの木の上で暮らすことになった…。少年の内面に視点を据え、その瞳に映る人間模様を詩的言語と入念な文体で描き、青年期に移行する少年の胸底を捉えた名作。
『The Grass Harp』の繊細な文学的表現を日本語にしたらどうなるのか?という好奇心から翻訳を読んでみた。参考程度にと思っていたのに、最後まで読み込んでしまった。訳もよかったが、触れたら壊れてしまいそうな感性が非常にすばらしく、カポーティは天才だと思った。「早熟の天才─恐るべき子供(アンファンテリブル)」である。
望んでも、望んでも、二度と戻れない少年時代への憧憬に、涙が出る。カポーティのほかの少年ものの主人公もそうだが、幸福であっても不幸であっても、あまり感情を出さない少年が、淡々と語っていく周囲の出来事。しかし少年はその時幸福であったのだ。もう一度その時に戻りたいと叶わぬ思いを胸にしながら、もう二度とここに戻ることはあるまいと思いつつ、町を去っていく。町に戻ることもないかもしれないが、この幸福だった時期にはもう戻れないのだという胸がしめつけられるような思いを切々と感じる。予想を遥かに超える名作だった。
2003年04月01日(火)
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