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 新版・指輪物語(8)王の帰還(上)/J.R.R.トールキン

映画公開に合わせて復習、ではなく予習。なぜなら、映画はこの3部も微妙にとり入れているから。全ストーリーは知っているものの、どこまでが「二つの塔」で、どこからが「王の帰還」だったろうか、その境目が定かではない。

「二つの塔」はフロドとサムの話で終わっているが、「王の帰還」はガンダルフとピピンがデネソール(ボロミアの父)を訪ねるところから始まる。
映画のほうは、1部の「旅の仲間」もそうだったが、「二つの塔」もこれだけ読んでいればOKということではない。全ストーリーをカバーしていないと、おや?と思うところが出てくる。

もちろん、原作を読んでいない人もいるわけで、それはそれで単純に面白ければいいのだが、原作ファンとしては、これはあの部分と確認もしたくなる。

4度これを読んで、今更ながらに気づいたのは、間に「二つの塔」の戦いを挟みながらも、あのボロミアの死からたったの13日しかたっていないことだ。そんなものだったのか?その間にすごいことをやっているなという感じ。となれば、これだけの大長編なのに、ホビット庄を出発してから灰色港に行くまで、日数にしたら、ほんの1ヶ月くらいのことなのだろうか?と改めて驚く。

そして、ここからはさらに皆ばらばらになって行く。フロドとサムはもちろんのこと、ピピンとガンダルフはボロミアの故郷ゴンドールに赴き、デネソール侯の元へ。メリーはセオデン王の傍らにつき、馬鍬砦へ。そしてアラソルンの息子アラゴルンは、レゴラスとギムリ、ドゥナダンのハルバラド率いる北の国の野伏たち、エルロンドの息子エルロヒア、エルラダンを伴って、誰もが恐れる死者の道へ。

そしてこの頃、闇の勢力は力を増し、とうとう夜明けも訪れなくなった。 この死者の道、怖いです。屈強なギムリさえも尻ごみする暗闇を進む一行。うしろを振り向いたレゴラスが、「死者たちがついて来る」とつぶやく。う、うわー、怖い! しかし、いかにも王の世継ぎらしいアラゴルンのりりしい態度に、何度も何度も読み返してしまう私。古めかしい物言いも、「アイヴァンホー」のあとでは全然OKだし、むしろ現代の言葉使いより、さらに威厳が増していると思えるほど。実は私はこの3部が一番好き。アラゴルンが最もアラゴルンらしいからだ。

[第4章 ゴンドールの包囲]
この章のゴンドールとモルドールの合戦は、息継ぐ暇もないほど、緊迫した描写で、結果はわかっていても、どきどき、はらはらする部分。トールキンもここは一気に書き上げたのだろうと推測する。

ボロミアの父デネソールが、ファラミア(ボロミア弟)に、「お前が行けばよかったのだ」などと非情なことを言い、そのまま戦いに赴かせた結果、ファラミアは瀕死の重症で帰ってきた。自分の言動を悔いるデネソール。この父と子のやり取りにまた胸が熱くなる。

ここでの合戦にはアラゴルンもレゴラスもギムリもいないので、活躍するのは、ガンダルフだ。皆が恐怖に怯えるナズグルどもを追い払い、魔法使いの魔法使いたる堂々とした働きぶりは、やはりイアン・マッケランでは役不足だろう。

[飛蔭 : Shadowfax]
この巻の影の主役は、ガンダルフがローハン王から拝領した馬、飛蔭といってもいいかもしれない。堂々とした体躯、驚異的な俊足、そして、他の馬が怖じ気づいて尻ごみをする中で、飛蔭だけは恐れも見せずに敵に対峙する。ここにガンダルフがまたがれば、怖いものなし!という感じ。素晴らしい馬です。なるべくイアン・マッケランの顔を思い浮かべずに、もともと自分の描いていたガンダルフを思い浮かべようとするのだが、うまくいかない。イメージを固定させてしまう映像というものの悪影響だ。また映画の中の飛蔭は、ただの白い馬で、原作に描かれている馬には程遠い。これもがっかり。

[セオデン王とデネソールの死]
ゴンドールの執政デネソールは、敵の襲撃にもはやこれまでと、重症のファラミアと共に聖なる墓所に入り、自らの身を焼こうとする。セオデン王率いるローハンの到着で、一気に合戦も熾烈が極まるが、敵の前に倒れ名誉のうちに命を落とすセオデン王。そして若い騎士に扮装したエオウィン姫もまたナズグルを倒して自らも倒れてしまった。傍らに控えていたメリーも、同じくナズグルのために倒れる。

そしてとうとう死者の道を来たアラゴルンたち一行がハルロンドの船着場に、アルウェンの手で作られたエレンディルの旗じるしを掲げて到着。彼等の活躍で、とりあえず勝利をおさめるが、もはやデネソールの狂気は元には戻らず、火の中に身を横たえ、命を断ってしまった。危機一発でガンダルフに救われたファラミア。彼はデネソールの不幸を知らぬ間に、ゴンドールの執政となった。

そして、ファラミア、エオウィン、メリーは「王の癒しの手」によって、一命をとりとめる。だが、再び戦いが始まる。無数の敵に囲まれたアラゴルンたちの前に現れたのは、かの鷲の王、風早彦グワイヒアであった。

[王の帰還]
この巻はやはり個人的に一番好きかもしれない。セオデン王の死の場面は、何度読んでも涙が出る。そして、勇ましいエオウィン。彼女のその胸のうちにあるものを考えると、切なくて仕方がない。また小さいホビットたちの勇敢さにも感動する。

しかし、エレンディルの旗じるしのなんと高貴で力強いことか!アラゴルンの意志の強さにはただ感服するしかない。そしてデネソールの無念な死。このストーリーもわかっているのだが、ここで死ぬことはないのに、と毎回残念でならない。あれだけ非情であった父親であったのに、最後にはファラミアを愛していることに気づき、悔恨の念にかられるデネソールの気持ちにも涙。

ともあれ、合戦の場面はこの巻がクライマックス。全ての人が勇敢に中つ国のために力を合わせて敵に立ち向かう。だが、それにはガンダルフの策略があったのだ。かの冥王の目を指輪保持者に向けてはならない。そのために、数は少なくとも、できるだけ派手に戦いをしてみせる必要があったのだ。そして絶体絶命の時に飛来したグワイヒア。いつもいい時に現れる、あの鷲の王に拍手!


2003年01月30日(木)
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