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 The Austere Academy/Lemony Snicket

ヴァイオレット、クラウス、サニーのボードレールきょうだいの「不幸な出来事」シリーズ第5巻。

今回3人のきょうだいは、学校に預けられる。この学校の副校長であるネロは、自らを偉大なバイオリニストであると称して、生徒たちに毎晩自分のバイオリンを聞かせるのを日課としている。その腕前たるや、バイオリンを弾けない人がバイオリンを弾いているといった程度。このネロはまた人の口真似ばかりしており、それがどれほど不愉快なものか、改めて思い知った次第である。

この学校で、きょうだいにダンカンとイサドラという友達ができる。二人は三つ子(だったのだが、一人は死んでしまった)で、同じく孤児であった。

副校長のネロをはじめ、毎日自分のくだらない話を書き取りさせる、バナナばかり食べているゴリラみたいな顔のレモラ(コバンザメ)先生、何でもかんでも寸法を計らせるバス(ブラックバスなど)先生、そして意地悪な生徒のカーメリータ・スパッツと、とんでもない人物ばかりの学校だが、そこに新任の体育教師、ジェンギスがやってくる。彼こそまさにオラフ伯爵その人なのであるが、例によって大人は誰も信じない。ジャージにハイカットの高価そうなスニーカー、頭にはターバンという異様ないでたちであるにもかかわらず、ターバンに眉毛が隠れ、ハイカットのスニーカーに刺青が隠されているので、まったく気がつかない(そんな、ばかな!)のである。ネロは自分の素晴らしいコンピュータに、オラフ伯爵のデータが入っていて、それと一致しないという理由で、きょうだいの話をまるでとりあわない。

そうしているうちに、きょうだいはジェンギスからS.O.R.E.(Special Orphan Running Exercises)プログラムと称した過酷なエクササイズを強いられる。その上、疲れ果てて勉強に身が入らないきょうだいに待ち受けていたのは、厳しいテストだった。そして、副校長の秘書をしているサニー(赤ん坊なのに!)には、お手製のホチキスの針を作るという辛い仕事が待ち受けていた。この苦境を救おうと身代わりになるダンカンとイサドラだったのだが・・・。

今回は、かろうじて体育教師ジェンギスの正体がオラフ伯爵であるとわかりはしたものの、身代わりになったダンカンとイサドラがオラフ伯爵にさらわれてしまう。何とか助けなければ!というところで話が終わっている。これまでより話の進み具合が遅いと思ったら、次の巻に続いていたのだ。連れ去られるダンカンが最後に残した「V.F.D.」という謎の言葉。これが非常に気になるので、早速第6巻に手を伸ばすという趣向。スニケットの本名であるミステリ作家のダニエル・ハンドラーの一面が見える巻である。

ところで毎巻末に、スニケットが出版社の編集者に宛てた手紙(次号予告のようなもの)がある。これが個人的には非常に楽しみである。毎回いろいろな趣向をこらし、前回はノートのぼろぼろの切れ端、今回はばかばかしいくらいにファンシーな便箋といた具合。内容も面白いのだが、そういう細かいところにこだわるスニケットのユーモアが、非常におかしい。しかし、ボードレールきょうだいの行方を追って、どんな状況でこれを書いたかといったいきさつも書いてあり、これもまた作品の一部なのである。


2001年06月01日(金)
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