ほうじ茶飲話【JOYWOW】
2003年03月02日(日)
ささやかだけれど、役にたつこと
いつ頃だったか、はっきり覚えていない。 NYで暮らし始めて数年経った頃。
友人のオフィスに遊びに行った時、たまたま本棚にあったその本が目に付いた。カバーもなくなっていたし、お世辞にも綺麗な体裁ではなかった。レイモンド・カーヴァー著・村上春樹訳『ささやかだけれど、役にたつこと』。この本を、その後私は何度となく読み返すことになる。
文中のパン屋が言う。
「よかったら、あたしが焼いた温かいロールパンを食べて下さい。ちゃんと食べて、頑張って生きていかなきゃならんのだから。こんなときには、物を食べることです。それはささやかなことですが、助けになります」
なんどもこのセリフに助けられた。しょぼくれたり、どつぼにはまってしまったり、気弱く帰国を考えたりしたとき。
そうだ、生きていかなくちゃ。ごはん、食べよう。 それで、あと一日がんばろう。きっとがんばれるよ。
本読んで、いつも泣くだけ泣いてから、キッチンに向かった。 あの日々が、ほろ苦く、懐かしい。
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