へそおもい

2013年04月06日(土) 奄美大島の旅6(忘れそうになりつつもがんばってかきなぐる)

【3月29日】

7時に目覚める。
くもり空。

しあわせでいっぱいだ。

おきてすぐ
はだしでうみにゆく。

うみに
あさの挨拶。

なめらかな水。

もったりと
つつんでくれるようで
安心する。


まやさんもやってきて

「なんか、
ここには
 足りないものも
 いらないものも
 なにもないねー」

という。



ほんとうに
そう!



完璧な世界だ。



足りないものもない
いらないものもない。


さえぎるもののない
太陽めぐる
ひろい空

ここちよい空気

はだしになりさえすれば
きれいな水に
足をつけることができる。

耳にここちよい波の音
風のおと。


生きているものに
かこまれていることの
心地よさ。


なんてぜいたく!



7時45分から
朝ごはん。


海藻と豆腐のお味噌汁。
ふきのとうみそ
にんじんのサラダ風
海藻入りの卵焼き
おさかな。

そして
おとなりのテーブルの
おかあさんがつくった
パウンドケーキ。


窓の外には
ここちよさそうに風にゆれる
アダンの葉っぱ。


とろんとろんと
よせては返す波。


ぶあつい雲の
くもり空。


雨がふらなければ
いいなあ
と
おもってから


あ、
でも
きっと一番いいように
かみさまが
してくれているんだ
と
おもいなおす。



ふと
大阪での自分の生活が
ミニチュアを上からのぞくように
みえてくる。


仕事
音楽活動
相棒とのくらし。


ほんとうに
大切に
したいことが
みえてくる。

いらないものが
みえてくる。


いままで
考えたことがなく

でも
心の奥底で
うっすらと
感じていたこと。


それが
くっきりと
みえてくる。


ごはんを食べながら
まやさんに
語りだすわたし。


わたしの
やりたいこと
そのために
すてなければいけないもの


自分でも
意外なこと


自分で
びっくりしながら
おもいが流れるままに
きいてもらう。


ありがとう
まやさん。


人生を
てのひらにのせて
眺めるような


とても
ふしぎで
大切な
朝ごはんだった。


あの
ひととき

いきたくても
なかなか
いけない場所に
いかせてもらったように
おもう。



*

さて
いよいよ
シーカヤック。


9時に
ガイドをしてくれる
リトルライフの天野さんご夫妻が
迎えにきてくれる。


わたしは

“山はだいすきだけど
 海はこわくて
 これまで
 ちかづくことが
 できませんでした。
 これを機に
 すきになれたら
 うれしいです。”


…というようなことを
前もって
伝えてある。


わたしたちは
水着の上に
ぬれてもいい
服を着て

準備万端
部屋でまつ。


9時ちょうどに
おふたりが
やってきた。


天野さんは
想像よりも
がっしりとした体格で
想像どおり
やさしいお顔だった。


奥さんのひろみさんは
目がまあるくやさしく
輝いていて
猫のようなキュートさがある
ショートで小柄の女性。


ふたりの車にのって
まずは
カヤックを車にのせるために
彼らの集落に寄る。


「きょうはね
 大潮で
 しかも昼間に干潮になる
 珍しいスペクタクルな日なんですよ。
 ちょうど昼間に
 干潮になりますから
 さんご礁とか
 もぐらなくても
 みえますよ。」


「へえ!」

「お天気は
 大丈夫ですかね」

「きょうはね
 風がないから。
 とってもいいコンディションだと
 おもいますよ。」


そうか、
くもり空で
なんとなく
怖いかんじがしていたが
風でみると
そうでもないのか。


風や潮の満ちひき
潮の満ちひきは
月の影響…

いろんなものが
つながっている。


彼らのおうちの前で
車がとまる。


「ぼくたちは
 カヤックとか荷物を
 車に積みますから。
 ここをちょっとあるいたところに
 おおきなガジュマルの木があって、
 そこでまちあわせにしましょう!」


集落の道を
おしえられたとおりに
ゆくと

すぐに

それはそれは
おおきなおおきな
ガジュマルの木が。


きのう会った
おじいちゃんガジュマルよりも
若いのか
勢いがある。


まやさんとふたり
ふくざつに絡み合った根っこに
だきついたりのぼったり
くぐったりして
あそぶ。


がじゅまるは
上から
根っこが
ぷらぷらおりてきて

それが土に着地して
根っことして下にのびて
それが太く
木の幹のようになる。

ふつうの木のように
下から上ではなく
上から下という
方向性がおもしろい。


そのうち
天野さんご夫妻が
車でやってきて
写真をとってくれる。





がじゅまるの根っこのひとつに
「平成21年着地」
とマジックペンでかかれた
木の札がかかっていて
笑える。


「あーこれ書いたの○○さんかなあ?」
「集落でこういうの書く人
 あの方しかいないよね…」


ご夫婦ふたり
ふふふ…と
わらいながら。


集落の人たちとの
あたたかな
くらしぶりが
想像される。






車にのって
シーカヤックの出発ポイントへ。


「ぼくたち
 おととい大阪から
 こっちにもどってきたんですよ」

彼らは
ハワイから日本の四国などをまわり
最後にひろみさんの実家のある大阪から
島に戻ってきたばかりなのだという。


「じゃあ、わたし一緒な飛行機だったかも!」

と
まやさん。

大阪から奄美大島は
一日一本の飛行機しかない。

「もしかして
 出会ってたんじゃないですか?
 わたしたち
 猫ちゃんのケージかかえて
 移動してたから…」


「え!わたし、
 まやさんを迎えにいったとき、
 ケージかかえた女の人でてきたのみました!
 クリーム色っぽいケージ、
 だいじそうにかかえてた…」

わたしがいう。


「それ、わたしかも!」
と
ひろみさん。


「でも、出てきたとき、ひとりだった気がする…」


「だってひろみ、先にひとりででたじゃない
 ぼくが荷物まって…」

「そうだー」

「じゃあ、もうすでに会ってたんですね」


「わたしも、伊丹で、横にいた人が、
 荷物整理しながら猫ちゃんあやしてた気が…
 窓際で…」
と
まやさん。


「え、それわたしたち!
 �爐気鵑舛磧爾鵑気鵑舛磧爾鶚瓩辰董弔△笋靴討拭直弌�


「えーすごいですね。もうすでにあってたんですねー。」


車はじきに
シーカヤック着場にでる。


湾のちょうど真ん中あたり。

きょうは
初心者でも上級者でも
たのしめるコースを
ゆくそうだ。


まず
荷物を防水袋に入れて
サスペンダーみたいなのがついた
防水の服を着る。


そして
カヤックの漕ぎ方を
こぐ棒(シャフトっていうのかな?)をもちながら
おしえてもらう。


あんまり
日常生活では
やらない動き。

難しいけど
わくわくする。


カヤックへの乗り込み方など
おそわって
いよいよ

くもり空の
ぬろんとした
海へ!


すーっと
すべるみたいに
海の上にでる。


わたしたちは
ふたり乗り。


わたしが前
まやさんが後ろで
舵取りをしてくれる。


天野さんとひろみさんは
それぞれ
一人乗りで

わたしたちを
前後左右から
見守ってくれる。

そうして
ゆっくり
ぷかぷか
大海にすすみゆく。

きもちがいい。



「あ、きょうは黒糖つくってる!」


遠くの岸から煙がでている。
風にのって香ばしい香り。


黒糖工場(といっても小さな小屋)で
黒糖をつくるのは
まいにちではないらしい。

きょうは
炊く日だったんだ。

島の人たちの
生活におもいを
馳せる。


加計呂麻島には
「かけろまきび酢」というものがあって
壷にさとうきびを入れておくだけで
できるお酢なのだという。

それは
この島でだけ
その作り方でできるんだそうだ。


加計呂麻島の空気中だけにいる
さとうきびをうまく酢にする
酵母菌たちがいるのだろうか。


昔の人が
たまたま
壷にさとうきびを入れていたら
酢になっていて
びっくりしている場面を
想像する。

そして、
それが
この島でだけだということが
わかって


まほうの島だと
いわれているのを
想像する。



でも
ほんとうに
ここは
まほうの島みたい。


まわりにあるものが
ぜんぶ生き生きしている。


どこにいても
生きているものに
かこまれている。


その気配に
安心する。



海の色が
うすいグリーンブルーから
透明な紺色にかわる。



こんなに
ちかくで

こんな
美しい色の水を


みたのは
はじめて。


お魚がおよいでいるのがみえる。


いまの季節は
海がめがいて
ときどき
呼吸しに
首をだすことがあるのだという。


とぷんとぷんとゆれる
海の上

湾の端
岩場のごつごつした
がけのそばを通る。

「流れが強くなってきたね
 そろそろひきかえそうかー」

方向転換して
砂浜のほうへ。

風がすこし
つよくなっている

海の色が
また
紺色から
緑がかったブルーにかわる。


砂浜にむかって


「体育会系になろう!」

といって
すこし
スピードをだしてみる。


つるつると
すべるように
海の上をはしる。


あの
砂浜のはしっこを
めざして。


そうして
浜に
到着。


カヤックにのっていたのは
1時間くらいという。


そんなに
時間がたっていたとは
おもえない。


もうすぐ
お昼ごはんの時間。


「すこし寒いから
 焚き火をたきましょう」


みんなで
乾いた枝や
流木を
あつめる。


わたしたち以外
誰もいない浜。


アダンの木が
わさわさ。


カヤックをとめたそばに
すこし穴をほって
枝を組んで
火をおこす。






ひろみさんは
枝のひろがった木の下で


つるつるの葉っぱをしいて
その上で
おなべをふたつ
コンロにかける。


ひとつは
パスタゆでる用

もうひとつは
トマトソース。


その枝の広い木は
夏になると
オクラの花のような
きれいな花を
さかせ

それが
砂浜におちるさまは
とても美しいそうだ。


想像するだけで
しあわせな気持ちに
なる。

なんて
楽園なんだ。



ひろみさんは
ちょうどよい
形の石の上に
にんにくをのせて
石でたたいて
つぶしている。


天野さんが
ひろみさんに
声をかける。


「貝をとってくるよ」


わたしたちも
貝とりに
ついてゆく。


すぐそこの岩場
岩にくっついている
貝をくいっとはがして
左手に握る。

三人で
ほどほどに
とれたら

それを
ひろみさんの作っている
トマトソースにいれて
だしにする。


パスタは
海水を水で薄めたもので
ゆでる。


焚き火の火が
ちょうどよく
燃えはじめる。


「アオサとりにいこう」

またもや
ついていって
そぐそこの岩にくっついている
アオサをとる。


海水であらって
そのままたべてみる。

洗いたりなくて
砂がじゃりっとするが
海の香りがうまい。


そうこうしているうちに
海のパスタができた!


焚き火のすぐそばに
組んでもらった
テーブルと椅子にすわって
いただくパスタの
なんと
おいしいこと!






天野さんご夫妻と
いろいろな話をする。


「大阪に行ってね
 都会のほうが不便だね…って
 話してたんですよ。
 車とめるにも、待たないといけないし、
 駐車場代もかかるし。
 なにかとお金がかかるしくみになってて…」



きのうのほかほかご夫婦が
話していたことを思い出す。


加計呂麻では
魚とお野菜は
ほぼ自給自足。

移住したてで
畑をしていなかったり
畑が小さいおうちには
集落の人が
野菜を勝手においてくれるので

だから
わたしたちも
畑をしようっておもって
はじめた…
といっていた。


お金をつかうのは
安い家賃のほか
お米と調味料を
時折古仁屋まで
買出しにいくときだけ…と。




天野さんご夫妻は

できるだけ
先住民族のような
生活に近づきたい
という。



それ
とってもいい。

わたしも
近づきたい。


わたしからみると

おふたりから
野性の
おおさかさや
強さ
茶目っ気が
伝わってきて


もうすでに
そんな
生き方を
されているように
感じるのだが。




わたしは

いまは
都会にすんでいるので

都会の中に
居ながらにして
どこまで
野性にかえれるのか

実験中だ。


でも
この島にきてから


もう
わたしも
都会で実験するのはやめて

この生き生きした
自然の中に
とけこんで


野性の智恵を学びたい…と

その衝動が
ぐんぐん
ふくらんできた。




カヤックのことを
天野さんに
おしえてもらう。


きょう
わたしたちが
のっているカヤックは
アリューシャンタイプという
名前だそう。

太めでぼてっとしている。

アラスカあたりの人たちが
島々をわたる荷物をつんで
長くまっすぐ走るのに
適しているのだとか。

昔は
鯨の骨で骨組みを組んで
アザラシの皮を
はっていたと。


それを
スキンカヤックといって
まるで
イキモノのように
すすむのだそうだ。


旅に出る前に
アラスカを愛した写真家
星野道夫さんの写真エッセイ集を
よんだばかりだったので


あの写真と言葉から
感じた
海の生活が
ふわーっと
イメージされてきた。


自然とともに
いきるひとびと。
つながりながら
いきるひとびと。


いまここにあるものは
世界のどこかの
過去のどこかの

だれかの
智恵が

つながって
あるもの。


いまも
むかしも
ずっと
これからも


自然とのつながりのもとで
人と人がつながって
自分が自分とつながって

それで
まあるい
まあるい

きもちいい循環が
できていくんだとおもう。




なにか
どこかが
きりはなされてしまうと

ゆがみができて
そこから
悪循環の
ありじごくに
はまってしまって


自分の心の中や
他人との関係の間に


いろいろな
苦しみが
おこってくるように
おもう。


きりはなされている時の
自分の感覚


仕事で出会う人々


社会でおこっている
いろいろな
こと

が

頭をよぎる。



それを
ぜんぶ
まとめて

いまこの
まほうの島にある

まあるい
つよい
つながりの
力で


つつみこんで
しまいたい。


そうおもう。



「珈琲すきですか?」

「だいすきです!」

「おいしい豆があるんです。
 ハワイで滞在していたのが
 コナの珈琲農園で。
 有機栽培のとってもおいしい豆で…」


その場で
がりがりまめをひき
いれてもらった
珈琲をいただきながら

おふたりが
冬の間いっていた
ハワイの話をきく。


イルカと泳ぐ話
くじらの声が
身体にひびく話。


「あした
 よかったら
 うちに
 ハワイのスライド
 みにきませんか?」


ふとした
おもいつきの
おもいがけない
おさそいに

わたしたちの
心もおどる。

ぜひ!



焚き火を囲む
わたしたち4人の足。

まやさんが

「わたし
 自分の身体の中で
 いちばん足のつめがすきなん。
 わあ、みせてしまった!」

みんなが
笑う。


かわいい
桜貝みたいな
つめ。


みんな
くつをぬいで

足の形を
かんさつしあう。


この
何気ない
時間が


ほわほわと
たまらなく
しあわせ。








「そろそろ潮がひいてきたね」


潮がひいて
岩場がでてきている。

岩場をおさんぽ。

すぐそこに
珊瑚がみえる。


岩についている
カラフルな貝や
いそぎんちゃく。

青いおさかな
くまのみ。

岩をもちあげてみると

にょろにょろした
クモヒトデたち
いきてるウニ
貝や蟹たち

なんて
たくさんの生き物たちが
みえないところに
ぎゅっと
つまっているんだろう。


相棒に
この
ぬにょぬにょした
多種多様な生き物たちを
みせてあげたいと
おもう。



…と、むこうに人影がみえる。

干潮になると
おいしい貝がとれるので
貝をとりに
みんな干潟にやってくるのだそう。


「あれ、あれ郵便やさんの○○さんじゃない?」

「仕事中だよね…笑」


配達の途中だけど
潮がひいてるから
貝をひろいにゆく。


このゆるさが
いい。



岩場散歩をおえたら
いよいよ
シュノーケリング。



うまれてはじめて。
うみとの対面。


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はたさとみ [MAIL]

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