へそおもい

2013年04月05日(金) 奄美大島の旅5(わすれないうちにいそいで書きなぐる)

ほかほかご夫婦の
おうちは
その集落のバス停の裏だと
きいていた。

地図をみながら
ここかな?

という小さな集落で
車をとめてみる。


腰の曲がった
ちいさなかわいい
おばあちゃんが

庭仕事をしている。
お元気だ。


きいてみると
ほかほかご夫妻の集落は
となりの集落だという。


ちょうどそこに
「がじゅまる」
の看板があったので
車をとめたまま
いってみることにする。

「近いですか?」


「うん、あるいていける。
 みんな喜んでみにくるけど
 結構古い木だからねえ…」


とおばあちゃん。


とても小さな集落で
空き家もあるようだ。

すみたいーと思う
かわいい平屋。


集落をぬけると
すぐに
広場と森がある。

濃厚な緑の空気。

「なんかすごいねー」


細い流れ沿いの小道を
少し歩くと

大きなガジュマルの木が
たっていた。

おじいさんのような
がじゅまる。


根がいりくんで
ケンムンが
すんでいるというのが
よくわかる。


わたしが
ケンムンだったら
どのあたりに
住もうかなあ…と
ガジュマルの
お気に入り部分を
さがす。


集落を間違えたけど
このがじゅまるじいさんに
会えてよかった。


車にもどって
ほかほかご夫婦の
集落へ向かう。


さっきの集落よりも
すこし大きい。


車をとめて
バス停の裏のおうちの
表札をみる。


あ、ほかほかご夫婦の
名前だ!

石垣の門と
緑の木々

「こんにちはー!」

声をはりあげて
門から挨拶してみると

「はーい!」

家と反対の畑のほうから
声が聞こえる。


「来ちゃいましたー」

畑をのぞくと
畑仕事中の
おふたりの
いっぱいの笑顔。

ああ
やっぱりほかほかだ。


畑には春菊の黄色い花が咲き乱れ
にんにく、キャベツ、にんじん…

大阪のうちの畑の野菜たちよりも
みんなひとまわりくらい大きい。

太陽の力か
土の力か
愛なのか。


「そうだ、となりのおばさんちの
 珍しい野菜みせてあげる、
 こっちこっち」

飛行機で畑の話をしていたときに
話題になった、奄美独特の
ナントカっていう大きな葉っぱのお野菜。

長靴姿のおかあさんについて
となりのおばさんちの畑を見学し

その流れで
集落のおじさんがやっているという
小さなゴルフセンターをみせてもらう。


センターといっても、
海に面した、
屋根のついたちょっとしたスペース。
そこから海にむかって
打ちっぱなしになっている。

いま、ちょうど干潮で
目の前の海は干あがって
海の底がみえている。


「ここね、海にむかって打つのよ。
 でね、干潮になったら
 玉をひろうの!おもしろいでしょ!」

「ははははは!」

みな笑う。


「わたしね、ここからの眺めがいちばんすきなの!
 ここにすわってビールのむの。
 ほら、すわってみて!」

おかあさんは少女のよう。
おかあさんの好きな風景がみえる
木のベンチにすわってみる。

右すぐそこにつきでた半島
海は湾からむこうの大海へ
ずっとつづいている。


「ときどきね
 ここ
 居酒屋になるんよー」

このオープンな
ゴルフセンターに
集落の人たちが集まって
お酒をのむことがあるらしい。

こうやって
気軽に
お家の近くで
海のそば
空の下

親しい仲間とゆるゆると
あつまって飲む

なんて
ぜいたくなんだろう。



ゴルフセンター。
ここにむかって球をうつ。
干潮になっている時が球ひろいのチャンス。



集落の中をくるっと
まわって
ほかほかご夫婦のおうちへ。





門を入ると
カラフルなお花が
咲き乱れるお庭。

空港からの道すがら
たくさんお花をかっていたけれど
このお庭のためだったんだ。


実のなる木には
お父さんが作った
かわいい
小鳥のおうちがあって
ときどきメジロがくるという。


海に浮いてる
うきを拾って
カエルにみたてて
つくった植木鉢が
カラフルでかわいい。



この中に土をいれて
植木鉢にする。



「植木鉢もかわんでもいいし、
 なんでもそろってる」

おとうさんの顔から
しあわせが
あふれている。


ほんとうに
この生活がすきなんだなあ
たのしいんだなあ


手作りの庭にいるだけで
なんだか
胸があたたかくなってくる。



「どうぞー、お茶のんでってー」


おうちからお母さんの声。

遠慮なく
おじゃまする。


昔ながらの古い平屋の民家を
お父さんが3ヶ月かけて
リフォームしたという。


木のあたたかみのある
心地のよい空間。


テーブルに四人ですわり
ロールケーキとコーヒーを
いただく。

「なんか、むかしから知ってる家族みたい!」

とまやさん。

「ほんとねー!
 たまたま、飛行機でとなりになって
 たまたま、加計呂麻に住んでるって。」

とわたし。


「地図みてる人珍しいから、
 観光のひとかなーっておもって。
 わたし、ここすんでるのよーって
 声かけたんよねー」

とおかあさん。


おとうさんは
ふふふと
わらっている。


わたしたちは
この家の子どもみたいに
これまでの旅の報告をする。


おとうさんとおかあさんは
「へえー」とか「よかったねー」とか
笑ったりしながら
話をきいてくれる。


昨夜のお料理とってもおいしかったこと、
加計呂麻に住みたい気持ちになっていること
集落を間違えてガジュマルの木をみにいったこと
諸鈍の集落でオムライスを食べたこと
神社でカメラがこわれたこと
ユタ神様に会ったこと。


「この集落にもね、ユタ神様いたんよー。
 91のおばあちゃんでね、もう亡くなったけど。
 いまはユタ神様、いないねー。」


この集落のユタ神様は、
自分が亡くなるのを
わかっていたらしく

亡くなる前に
お茶碗など
いらないもの全部
海にすてていたらしい。


「みんなでお家片付けにいったんだけど
 きれーに片付いててねー」

「海にお茶碗すてて
 ごみにならないんですか?」

「このへんの人ね、
 そういうところあってね
 おもしろいのよ。
 全部うみがもっていってくれる
 うみに返すっていう感覚なんよね。
 きっと。」



そのユタ神様のおばあちゃんとは
お二人が散歩中に
よく会っていたらしい。


「このへんではね、さんぽのこと
 �爐△襪韻△襪鵜瓩辰討いΔ痢�
 �爐△襪韻△襪韻靴討襪痢次��瓩辰�
  声かけてきてね…。」



ふたりが
散歩の途中
海をみながら
すわっていたら


いつも横に
ユタ神様のおばあちゃんが
ちょこんとすわって


「金はいらん。
 ふたりなかよく
 あればいい…」

とつぶやくのだという。


「そんな言い方してたよ。
 なんかようおぼえてるわー」


おかあさんが
おばあさんの
口まねでいう


「金はいらん。
 ふたりなかよく
 あればいい」


そのことばが
胸にじんとひびく。



おふたりは
大阪の職場で出会い、
9年前にここに移住してくるまで
共働き生活を
していたそうだ。


おとうさんが
脳梗塞で2回倒れ、

医者に
次倒れたら命の保障はない
といわれ、

それで
定年前に退職し
残りの人生を
大好きな海のそばで
住むことに決めたらしい。


お父さんは3月末に退職し
先にこちらにきて
こつこつとリフォーム。


お母さんは
まだ仕事があったので
3ヵ月後の7月に
追いかけて
やってきたのだという。


朝起きたら
まず
たりで散歩。

海沿いを
ずっと向こうまで
結構な距離を
あるく。


朝ごはんを食べて

晴れたら
船をだして魚を取るか

それとも
畑仕事をするか。


お昼をたべたら
「午後はなんもせん」。

そんな暮らしを
しているという。



飛行機にいるときから
まるで恋愛中の
カップルみたいに
なかがいいなあ…と
おもってはいたが


いろいろな
おふたりの歴史があって
いまこの
ほかほかご夫婦が
あるのだなあ…と
しみじみ
おもう。



お互いの
かけがえのなさ

いまここに
一緒にいることの
たいせつさ
しあわせさを

一瞬一瞬
あじわいながら
生きていることが

おふたりから
伝わってくる。




お父さんになついている
飼い猫歴のある野良猫。



加計呂麻の
いろいろな話を
きく。



ご近所のおじさんが
畑仕事をしている横を
お散歩でとおりかかって
挨拶をしたら

「かぼちゃ
 もうすぐ
 うまれるよー」


という言い方を
したらしい。

野菜の実がなること
うまれるっていうんだーって
びっくりしたそうな。

「まるで
 子どもを育てるみたいにね
 こっちの人は
 植物をそだててるんよ」



お母さんが
緑茶をいれてくれる。

そのお茶碗が
あたたかみがあって
とってもすてきだった。


「すてきなお茶碗ですねー」

「わたしが作ったのよー」

とお母さん。

陶芸をやっているのだという。



すぐ横の棚にならんでいる
どっしりとした壷や花瓶

みんなおかあさんが
つくったと。


「すてきー」
「あったかいカタチー」

わたしとまやさんが
ながめていると


「いま飲んでるやつ、あげる。
 もってかえりなさいよ。
 あとで洗ってあげるから」


「え!いいんですか!」
「うれしいー」

色めきたつ
わたしたち。


まやさんの
宿での珈琲カップは
黒糖焼酎のカップだったが
これからは
お母さんのカップに
バージョンアップだ。


時計をみると
もう5時すぎ。


そろそろ
お暇することに。


部屋の壁
ところどころに
筆で描かれた
うたの短冊が
かかっている。


よくみると
お母さんの名前。


「うた詠むんですか」

「そうねー」


島での
暮らし

集落の人たちの
日常の風景を
描いた

あたたかな
そぼくなうたたち。


その中に
お父さんのことを
詠んだうたがあった。


生死をさまよった
おとうさんが
元気にそこにいて
畑をたがやしている
…
その姿をみている
おかあさんの心が

伝わって
くるような
うた。


さっきから
じわじわと
おされていた

わたしの
涙スイッチが
ついにオンになり

涙が
でてきてしまう。


家をでると

陽が傾いた
夕方の空

おふたりが
心をこめて手入れした
カラフルなお庭。

4人で門をでる。


そこに
さっきのゴルフセンターを
やっているという
集落のおっちゃんが
やってくる。


いま、
加計呂麻島では
NHKのドラマの撮影で

仲間由紀恵や石坂浩二がきているらしい。
すごい!

近距離にいるのだ!


そのおっちゃんは
撮影のためのカメラをのせる船を
だしていたのだそうだ。


「おつかれさまー。
 どうだった?
 仲間由紀恵きれいだった?」


「(遠くて)小さかったわー」笑


ドラマは5月25日から全5回、
先生関係のドラマらしい。
要チェックだ。



車にのりこんで
お父さんとお母さんに
手をふる。


「ありがとうー!
 またきます!」


「いってらっしゃーい!」


どうか
ふたりなかよく
すえながく

この豊かな生活が
つづいてゆきますように。

また
元気なおふたりに
あいに来れますように。


祈る気持ちで
手をふる。




まやさんとふたり

満たされた
気持ちで
宿へ向かう。


ありがたい出会い。
出会いとつながりの
旅だ。


*

今夜の宿“5マイル”も
HABUSマスターに教わった。



挨拶して
お部屋に案内してもらう。


部屋は全部で三つ。


どの部屋も
部屋をでると
すぐそこが海。

おおきな木に
ハンモック。


「おふろ、どうしますか?
 ごはんの前にします?」

「どうしようかなあー」

「いま海にはいって
 おふろで流してから
 ごはんでも
 いいかもしれないですね」


それ、いい。


お部屋は
ひろびろ
8畳くらい

窓から海がみえ
波の音がきこえる。

きもちがいい。



部屋に荷物をおいて
はだしになって
いそいで
うみへむかう。


夕暮れのうみ
最初は
ひんやりしているが
すぐになれる。


水が
とうめい。
やわらかい。
やさしい。


今朝は
どよーんと
つかれていたのが
ずいぶんと
元気になっている。


みずのなかで
とびはねてみる。
みずと
あそぶ。

貝や珊瑚をひろう。


まやさんも
海に足をつけて
うっとりしてる。






ひとしきりうみを味わい
そのままおふろにゆく。


男風呂の窓には
太陽の絵

女風呂の窓には
お月さまの絵。


ユタ神様がいっていた
太陽と月
イザナギとイザナミを
おもいだす。



描かれた
カラフルなお月さまをみながら

コンクリ打ちっぱなしの
野生的なお風呂に
つかる。


ああ
きもちいい!


「さとちゃん
 さっきから何回も何回も
 �爐�もちいい�瓩辰討い辰討襪茵�」


だって
なにもかも
きもちがいいのだもの。



晩御飯は
天井が高い
食堂のお部屋へ。


わたしたちと
もう一組のお客さん。

そして

5マイルの
小さなかわいい姉妹と

新潟からきている
姉妹のおばあちゃん。

姉妹のおかあさんかと
見紛うくらい
若々しい。


お料理をつくっているのが
この姉妹のおかあさん、
独特の魅力がある女性
りえさん。


彼女は
新潟から
5マイルにきて
働いているうちに
結婚して

この島に
住みついて
しまったのだという。



たまたまいま
おかあさんが
孫にあいにきているのだそう。


テーブルの上には
おおきな貝。
貝のお刺身だ。


となりのテーブルの
りえさんのおかあさんが
この大きな貝は
夜光貝だと教えてくれる。


表面を磨いて
アクセサリーにできるそう。



ユタ神様が
鏡や数珠にあしらっていたのは
ぶあつい夜光貝だった。


夜光貝の身は
しっかりして
こりこりして
でも
やわらかくて


なんだこりゃ!
という
うまさ!


うまい!
ほんとに
うまい!


まやさんは
「きょうはお酒を我慢するー」
というが

わたしは
こりずに
ビールを頼んでしまった。


夜光貝からはじまって
うまうま料理が
でてくる。


子どもたちもみんなで
つくったというジーマミー豆腐。

車麩やふき
ぜんまいなどの
煮物。


アオブダイの
フライ。


お魚のみそ汁と
ほかほかご飯。



たべていると
スタッフのおにいさんが


「いま、海に赤い月がでていますよ」と

こっそりいいにきてくれる。


いましかない!と
おいしいごはんをおいて
いそいで海へ。


湾からみえる半島の上に
まあるいおおきな
赤い月。


ぽってりと
わらっているよう。


「はやく
 ごはんたべて
 うみにはいろう!」


月にてらされた
うみにはいりたくて
たまらないのと

おいしすぎるごはんとの
あいだの

葛藤。



いまここにある
この赤い月は
きっと
いまだけだから

その
あかい月を
のみこんで
身体にいれるようにして
感じてみる。



まやさんが
イタリアの古典の
月のうたを
イタリア語で
うたいだす。



まやさん
月の女神
みたい。


(大阪にかえってから
 この月のうたの歌詞を
 おしえてもらう。

 “優雅な月よ
 
 自然のすべてのものに
 愛の言葉を吹き込む
 優雅な月よ…”

 こんな歌詞だったらしい。

 あの夜に
 あの時に
 ぴったりの歌だった)


いま
自分が
どこにいるのか

何歳で
なにをしているのか

自分が
男なのか
女なのか

人間なのか


わからなく
なってくる。


ただ
海があって
月があって
夜がある。



でも
ごはんの
つづきを
たべなければ。



食卓にもどると
電気の光が
まぶしい。


おいしすぎる
ごはんのつづき。


黒糖焼酎の
酵素ジュース割りをのむ。


ごはんも
おいしく
味わって


ひといきついて
また
うみへ。




月はもう
あかくはなく
高くあがり


なみなみの雲に
みえかくれしている。


やっぱり
さっきの月は
さっきだけだった。


いまの月も
いまだけ。


はだしになって
うみにはいる。

ああ
きもちがいい。



月がうつる海。

月の光が
海にとけて
なみがとろとろに
なっている。


目をとじて
自由にからだを
うごかしてみる。


目をとじると
身体が
うごきたい動きが
みえてくる。


胸が
いっぱいになる。


もう
これ以上の
しあわせはないと
おもう。


声をだしたい。


まやさんと
はもるみたいにして
自由に声をだしてみる。



月のかみさま
ありがとう

海のかみさま
ありがとう。


自然と
そうおもう。


時間とか
年齢とか
場所とか
現実を
越えて


自分が
すっぱだかになったような


もしも
魂というものが
あるのなら


魂がこっそり
カラダから
ぬけだして


うみで
あそんでいるような

ついでに
カラダも
洗濯したような


そんな
夜だった。





月と
海と
ひとしきり
あそんだら


さすがに
やっぱり
つかれていたのか


うみからあがって
まもなく

11時には
すやすや
布団で

撃沈…。





あしたは
いよいよ
シーカヤックだ。


まだ
まだ
うみの
そばに
いられる。

しあわせ。


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はたさとみ [MAIL]

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