どうでしょう。

 六時四十五分を指したまま、私の目覚まし時計は止まっています。
 2月15日の朝以来、電池は抜きっぱなし、一日に1分だけ正確な時間を指すのです。
 酔えない五合酒と処方の倍の量を飲んだ睡眠薬に因るやはり少し覚束ない足取りで朝陽と共に放り投げたのです。一日の始まりに苛立ち恐怖し、秒針の音に我慢ならず。
 しかしどうでしょう。
 2月15日よりは、私は遠くに来たような気がしませんか。
 時間も日付も曜日も関係ない生活を送っていますが、遠くに来ることができたと思いませんか。


 一生懸命働いている同年代の女性の日記を読んでいます。
 以前の自分を思い出して、2月15日以前の私を思い出して、少々心配げに見守っています。やり甲斐があるなら、怒る余裕があるなら、実現したい理想があるなら少し元気なのかな、と少し安心しつつ。食欲がなくなったりアルコホル摂取量が増えるのは危険信号。気をつけて欲しい、心から。
 ちなみに残業時間が決まった就労時間を月40時間超えていると、鬱病になりやすい半面、雇用保険の給付も早まります。なんとかなるさ、ケ・セラ・セラ。
 ついでに私は残業手当といういうものを、就職以来一円たりとももらったことがないので羨ましい。まじめに査察が入って欲しい、後輩たちのためにも。
 上層部は少し慌てるといいのだ、フフン。
 でもま、いまの私にはどうでもいいけどな。

 どうでしょう。私は2月15日から遠くに来たと思いませんか。
 怒る元気も食欲も。
 他人を心配できる程度には。
 朝陽を恐れぬ程度には。
 アルコホル摂取量は相変わらずですが。
2005年04月13日(水)

メイテイノテイ / チドリアシ

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