カンアジ

 犬を飼っているひとの殆どがそうだと思うのだけど、ワタシも例に漏れず、「親ばか」ならぬ「飼い主ばか」です。
 世界でいちばん、うちの犬が可愛いと思っています。
 誰がなんと云おうと、世界でいちばん、うちの犬が可愛いです。
 典型的な飼い主ばかです。



 帰宅後、いつもより少し遅い犬の散歩。
 隣を歩く犬の、くるんと巻き上がった尾のゆれる様を見ていると、愛しさがこみ上げる。それはいつものことですが、今日はなぜだか突然、ふと20年前に亡くなった父方の祖母を思い出しました。

 祖母は遅くにできた体の弱い末っ子(つまり父)と、その子であるワタシと妹を、それは可愛がったと聞きます。
 が、ワタシ自身には「可愛がられた」という記憶は、あまりありません。
 覚えているのは、「アイゴ、ネ、カンアジヤ〜」と叫びながら追いかけられ、ほおずりされたことだけ。
 ワタシたちは、わけのわからない言葉を叫ぶ祖母に恐怖し、逃げ惑い、つかまったときは怖くて泣きました。
 大人たちはそれを見て笑っていました。


 あのときは本当に怖かったし、笑うばかりで助けようとしない大人たちを恨んだりしたけれど、いまなら、ほんとうに微笑ましい光景だったろうことが解ります。
 「カンアジ」とは朝鮮語で「仔犬」。
 つまり「私の仔犬ちゃんたち」と、祖母は云っていたのです。
 ワタシがこの犬を見るように、可愛く愛しく思ってくれたのだろう。
 あーなんであのとき逃げちゃったんだろう。泣いちゃったんだろう。
 なんだか申し訳ない気持ちになります。
 ま、今更後悔しても詮無きことですけどねー。
2003年03月28日(金)

メイテイノテイ / チドリアシ

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