それでいい

 9.11以降、イスラーム信者、とりわけ原理主義者たちへの差別や暴力の話を多数聞いた。
 まったく信じられないことに、原理主義者というだけで過激なテロリストだと誤解する人間が多かったのだ。
 無知の無恥。



 日本人の友人が、「ごめんね。あんな馬鹿な日本人だけじゃないからね」と私に言った。
 ありがとう。
 でもね、あんなおばかさんのことで、君が私に謝らなくていい。
 いつか侵略戦争のことを知らなかったと、申し訳ないと云ってくれたけど。
 戦争を知らない君が、戦争を知らない私に、申し訳ないだなんて思う必要はどこにもないんだよ。
 罪悪感を持たなきゃ人道的じゃないなんて、思う必要ないよ。
 私もほかの韓国人がしたことを、ほかの朝鮮人がしたことを、申し訳ないなんて思わない。
 一個人として、加害者に対して腹を立てるし、一個人として被害者には同情する。
 でも済まないなんて思わないよ。罪悪感も持たないよ。
 人間が、人間を分類するカテゴリ…「人種」とか「国籍」とか「信じる神」とかね。そういうのに縛られつづける限り、こういう問題は消えない。
 だから私は、自分に対しても、君たちに対しても、そういう風には思わないようにしようと決めたの。


 ばかだの、あほだの、死ねだの。
 そういう言葉は、それこそばかでも云えるのね。
 でも怒りをぶつけるだけでは、まったく説得力を感じないし、怒りをぶつける相手を間違うなんて論外。
 おばかさんが、自らのおばかさん加減をさらけ出すだけなのね。

 だから君は謝らなくていい。君が責任感を感じなくていい。罪悪感を感じなくていいの。
 君はただ、徹底的にあのおばかさんたちを怒ってくれたらいい。蔑んでくれたらいい。
 私も蔑む。拉致に関わった北朝鮮政府を蔑むし、侵略者を蔑むし、チョゴリ姿の女子中学生に石を投げたおばさんを蔑む。テロリストを蔑むし、「報復戦争」を蔑む。
 それでいんじゃない?いまのところはさ。





 なんだか今日は説教じみていてごめん。
 さ、旨いワインでも飲もうか。
2002年09月20日(金)

メイテイノテイ / チドリアシ

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