愚問ダ

 北朝鮮政府とその政治に私が憤りを感じないか?
 愚問ダ。
 感じないわけがない!

 日本政府とその政治に、あなたがた日本人は憤りを感じることは皆無か?
 これはまあ、ね。人それぞれなんだろうけどね。
 大絶賛、なんて話は聞いたことはないわね。
 正直、私もお客さんの立場ながら、腹立たしいことは尽きませんわよ。

 ま、それはそうとしてね。
 朝鮮学校や在日コリアンに対する暴力や中傷には、堪えがたい憤りを感じる。

 あのねー。ワタシが20年前に日本人を拉致るのに、手助けしたと思うわけ?
 遠藤周作さんの「海と毒薬」みたいにさ、ワタシ達が彼らを殺して人体実験をしたとでも?
 わけわからん。変なこと考えるね。


 何も知らない、何もできない朝鮮学校の女子中学生に石を投げた人間に云いたい。

 拉致事件を「国民感情」として或いは「人道的見地」として許せないとあなたがたが思うのであれば、植民地の被支配者を父祖に持つ我々アジアンも、「国民感情」や「人道的見地」から、「日本鬼子」には腹を立てているし呆れ、また蔑んでいるのですよ。

 同時に我々在日コリアンは、日本で生れ育ち、日本を永住の地と定めた者として、そして何より「人道的見地」から、北朝鮮政府とその政治には憎悪すら感じるし、また蔑んでいる。

 ソーレンにお勤めの友人も、
 民族学校で教鞭を持つ友人も、
 韓国人留学生の友人も、
 朝鮮族部落出身の中国人の友人も、
 私の家族も、
 民族学校に通う高校1年生の従弟も、
 皆一様に裏切られ、傷つき、腹を立て、嘆いている。

 私たちが「祖国」の犯罪の報道を喜んで聞いたとでもお思いか?
 私たちが、「祖国」に失望しないとでもお思いか?





 そして私は。



 私は、どこかで予感していた。
 ずっと前から、こんな日が来るような気がしていた。
 拉致事件は、有りえたかも知れないと、ずっと思っていた。


 総書記自ら謝罪したことには驚いたものの、拉致事件の行方には驚かなかった。
 私は「祖国」を露ほども信じてはいないし、また信じたこともなかったのだ。
 そのことに気付き、少なからず驚いた。
 祖国に希望を持ち、裏切られた、と嘆く彼らは、未だピュアなのかも知れない、などと考えてみたりする。
2002年09月19日(木)

メイテイノテイ / チドリアシ

My追加 エンピツユニオン
本棚