空色の明日
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2016年11月27日(日) この世界の片隅に

「この世界の片隅に」を見てきました。
梅田は満席続出で、尼崎で見ましたが
いろんな世代のいろんな感じの人が
かなり大勢見に来ていました。
そういえば、前に北川景子さん主演の
ドラマで見たのだった、このストーリー。
だからおおまかなストーリーはわかっていたけど
観終わった印象がこんなにも違うのかと。

実写よりも頭に刻まれる場面が多い。
それはアニメにしか書けない表現があって
実写よりも伝え方にバリエーションがあるからだと思う。
だから場面として記憶に残る映像が多かった。

広島の戦争関連の映画といえば
子供の時、「はだしのゲン」の実写映画を見たことがある。
まだ小学校2年くらいのころ。
恐ろしすぎてトラウマになるかと思うくらい怖かった。
結局悲しくて怖くて最後まで見れずに出た記憶がある。

見なければならないことも
目をそらしてしまえば何の意味もなくなる。
そこの境目をこの映画は絶妙なさじ加減で作っていて
だからきちんと最後まで子供でも見ることができると思う。

それが、あの絵のタッチであり、あの声優たちであり
あの音楽のなせる業だと思う。

のんちゃんはあまちゃんの時にいろんな困難に
あんなにもぶち当たるキャラクターを
あんなにもひょうひょうと演じてしまった。
彼女にしかできないそのふわりとした独特の存在感を
この映画でも生かされていたと思う。
温かくふんわりと心に入ってくる。

男の人が戦場で戦うだけが戦争ではなくて
今この映画を見る多くの人たちがひとたび戦争になったら
必ず体験することになるであろう生活を
生活者の目線できちんと描いてあるからこそ
戦争を遠くのドラマに感じずにきちんと肌で理解する入口に
なってくれる映画だと思う。
戦争になったって毎日食べて毎日暮らしてく。
毎日怒ったり泣いたり笑ったりする。


一昔前は「世界の中心で愛を叫ぶ」だった日本人の意識が
震災以降「この世界の片隅に」大切なものを見つける目を
やっと見開いたから、今この映画が話題になってるのだと思う。

続々と上映館が増えているのも理解できる。
ぜひ多くの人が見なければならない映画だからこそ
クラウドファンディングで記録的な賛同者が集まったし
その人たちがエンドロールに名前が載ることを
誇りに思える作品だと、見た私も思った。

観終わって、あとからあとからじんわりと
世界の片隅できちんと生きることが
別に中心でも片隅でもどうでもよくて
素敵なことなのだと自信をもって言えるような
そんな気持ちが湧いてくる。

たくさんの人が見て、もっと話題になってほしい。
この波紋をもっと世界に広げてほしい。
片隅で生きる私にできることは、ここでこう書くくらいだけれど。


安藤みかげ