紫
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きのうの話には続きがあります。
小さな黒い「家族」が外に出て行ったあと、母がふらりと私の部屋にやってきました。
「10年ほど昔になるけど……」
どうやら昔話が始まる様子。
いきなり、いったい、なに?
「ある日、夕飯をひとりで食べていたら、テーブルの上を小さなクモがてくてくとやってきてん」
クモなんて、もう見ただけでも足がすくみます。
「で、そのクモ、テーブルの上にこぼれていた水を飲みだしてん」
ま、クモも喉が乾くだろうし。
「次の日も来て、テーブルの上を歩いててん。でもなんにもなかったから、わざと水滴を落としてみたん。そしたら、すすすっと寄ってきて、水を飲んでたん」
へぇ。
「それから毎日来るから毎日水をあげてたら、だんだんとなついてきてね」
……。
んなアホな。
「ホント、ホント。3ヶ月くらい毎日水とかおかずのかけらをあげてたら、クモもけっこう落ち着いて食べるようになって、いっしょに毎日クモと夕飯を食べててん」
クモと晩餐する母。
やはり、おそるべし!
そして、この話には後日談がありました。
ある日、父がいつもより早めに帰ってきたそうです。
父のごはんをよそいに母が席を立ったとき。
「お!こんなところにクモがいる。(バシッ)」
最後の音がなんだったかあえて語らず。
しばらく母は父と口をきかなかったとのことでした。
今さらですが、クモよ。
成仏しておくれ。
ちーん。
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