椰子の実日記【JOYWOW】
2006年01月15日(日)
無力な生物として
丸山健二に凝っている。
ぼくは最近の作品『貝の帆』『生きるなんて』で 知った。そして今日、学問所に行く道すがら たまたま立ち寄った書店で『荒野の庭』に出会い、 たちまち丸山ワールドに引寄せられた。
氏は23歳で芥川賞受賞、25歳で長野県に移住、 以降、文壇とは一線を画して活動を続けている。
氏が常に訴えることは、「あたまでっかちになるな」 ということである。使い古された言葉なので、氏の 意図を正しくは伝え切れていないと思う。よってご本人 の言葉をそのまま引用する。
------------------------- 所詮は道具でしかない言葉。 それを信じ過ぎることは 甚だ危険なことである。 傲慢であるばかりではなく、 精神の衰退を招きかねない。 ------------------------- (『荒野の庭』より)
人間は「確からしさ」を高めようと努力し、科学を 追究しつづけてきた。「確定」は常に「不確定」の 上に置いた。しかし、雪がここまで積もると、 だれが予想できただろうか。雪害を予測なんて、 だれもできない。そこにあるのは無力な一個の 生き物としての人間だけだ。
雪の被害に胸を痛めているこの時期、丸山健二 を平らなこころで読むことは、非常に意義深い ことだと信じている。世界との関わりの中で、 何ができて、何ができないかを見極めるためにも。
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