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2003年10月10日(金) 1000の風

今日はちょっと本の話を。秋の夜長に短時間おつき合い下さい。

『1000の風』という詩をご存知ですか。
原題は『A THOUSAND WINDS』といい、作者は不明とされています。

私がこの詩を読んだのは、もう3年ほどは昔、小さな本屋でした。
ええ、立ち読みです、あはっ…。

そのころ大学生で時間が有り余っていた私と友だちが、
暇つぶしに出かけた本屋でした。
友だちがお気に入りだというその本屋は
大きな倉庫のような、ガレージのような外観で、
中に入ると60年代のアメリカを思わせるようなポップな雑貨やら
えせヴィンテージなジュークボックスが所狭しと店内をうめ尽くしていて
本屋というより雑貨屋。
歩くには足下に気を付けなければならないほどでした。

ひとしきり見て回り、平台に置かれていたその本を、
私はなぜだか手にとりました。

頼り無いほど軽く、小さなその本でしたが、
中に閉じ込められていた言葉は、私のこころを揺さぶり、
決して忘れられない感動と共に、記憶されたのでした。

- A Thousand Winds - Author unknown

Do not stand at my grave and weep.
I am not there, I do not sleep.

I am a thousand winds that blow;
I am the diamond glints on snow.
I am the sunlight on ripened grain;
I am the gentle autumn's rain.

When you awake in the morning hush,
I am the swift uplifting rush
Of quiet in circled flight.
I am the soft star that shines at night.

Do not stand at my grave and cry.
I am not there; I did not die.

千の風

私の墓石の前に立って涙を流さないで下さい。
私はそこにいません。眠ってなんかいません。

私は千の風になって吹き抜けています。
私はダイヤモンドのように雪の上で輝いています。
私は陽の光になって熟した穀物にふりそそいでいます。
秋にはやさしい雨になります。

朝の静けさの中であなたが目覚めるとき
私は素早い流れとなって駆け上がり
鳥たちを空でくるくる舞わせています。
夜は星になり私はそっと光っています。

どうか私の墓石の前で泣かないで下さい。
私はそこにいません。私は死んではいないのです。


ちょうどその頃私が欲しかった言葉が、この詩には込められていたんでしょう。
今でも時折思い出しては、ここから不思議と力を得ます。

天声人語でも今年の8月に紹介されたとか…(朝日新聞読者なのに知らなかった、悔。)
実際、本だと短い文節に区切られ、見開き1ページごとに、
その文節のイメージに合う壮大な大自然の写真が載っています。
見かけたら、是非、手にとってみて下さい。

以上、秋の夜長に本のお話でした。

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