エンターテイメント日誌

2006年04月17日(月) Break a leg ! 〜 「プロデューサーズ」

さて、ミュージカル映画版「プロデューサーズ」である。メル・ブルックスが脚本・監督したオリジナルの「プロデューサーズ」は1968年の製作で、今回メルは文字どおりプロデューサー兼脚色を担当し、監督は舞台版で振り付け・演出を担当しトニー賞に輝いたスーザン・ストローマンが当たった。

評価はB。ウィル・フェレルとユマ・サーマン以外は殆ど舞台のオリジナルキャストで固められ(その点ではまもなく公開される映画「RENT」も同様)、舞台の魅力をそのまま映像化したような作品に仕上がっている。それがこの映画の長所であり同時に短所にもなっている。

ブロードウェイ初演キャストで観劇をしている筆者にとってはその感動がそのまま缶詰されて、あたかも地中に埋められたタイムカプセルの如く年月を経て蘇ったような、懐かしくも幸福な2時間強を過ごす事が出来た。有名なおばあちゃん達の歩行器ダンスなんか、野外ロケをされてはいるものの、振り付けは舞台と全く同じだったので驚いた。

ただ、ここまで舞台とそっくりそのままだと、一体映画化する意味はどこにあるのだろうという気も一方ではする。これならいっそのこと、舞台を映像に収録してDVD化すればそれで事足りるのではなかろうか?ネイサン・レインとマシュー・ブロデリックの演技も舞台そのままのハイ・テンションなので、リアリティを求められる映画の世界ではオーヴァー・アクトの感も否めない。「映画」を観に来た観客にとっては些か違和感があるのではなかろうか?

舞台に忠実という意味ではオリジナル・キャストが映画にも出演している「マイ・フェア・レディ」(イライザ役はジュリー・アンドリュースからオードリー・ヘップバーンに変更)や、「ザ・ミュージック・マン」「努力しないで出世する方法」などを彷彿とさせた。また、映画の色彩は極彩色のテクニカラー調で、あたかも「パリのアメリカ人」「雨に唄えば」「バンド・ワゴン」の頃のMGMミュージカルのようであった。つまり本作は一言で表現するならば、良い意味でも悪い意味でも<古色蒼然たるミュージカル映画>であり、そこが評価の分かれるところだろう。

なお、余談だが今回の日誌のタイトル"Break a leg"はニューヨークの演劇人が使用する慣用句であり、「プロデューサーズ」の唄にも登場する。詳細はこちらをご覧あれ。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]