エンターテイメント日誌

2006年03月18日(土) ナルニア死すべし

頭に来た。何がって「ナルニア物語」である。評価はD-だ。限りなくF(Fail、不可)に近い。

全くもって子供騙し。大人の鑑賞に堪えうるものではない。「ロード・オブ・ザ・リング」や「ハリー・ポッター」シリーズなど他のファンタジー映画の足元にも及ばない。爪の垢を煎じて呑んだって、もう手遅れだ。子供向けといっても幼児までだな。筆者が小学生でこれを観たとしても馬鹿にするなと怒り狂ったことだろう。

ファンタジーとは子供の(あるいは少年の心を持つ大人の)夢である。それはいい。しかし、いくら絵空事とはいえそこにはルールがある。最終的に主人公が栄冠を手に入れるとしても、その過程には血の滲むような努力があるものだ。身近な人の死とか、辛く悲しい別れもある。フロドだってハリーだってそうだ。そういう苦労を経て主人公は成長し、それを追体験する子供たち(読者、あるいは観客)も大人になっていくのである。「ロード・オブ・ザ・リング」の結末なんか、フロドは灰色港から旅立つわけだが、その行き先は黄泉の国であることを映画は暗示している。決してハッピー・エンドではなく、ほろ苦い。

しかし「ナルニア」にはこの要素が完全に欠落している。主人公の少年少女たちが貰う魔法のアイテムには、な、なんと、放てば必ず敵に命中する矢とか、どんな傷でも癒す薬とかがあるのである!ふざけんな!!そんな必勝アイテムがあれば誰だって戦に勝てるじゃないか。主人公には何の困難も努力も必要ないのである。だから彼ら彼女らがナルニアの救世主である必然性はほんの一欠片もなく、極端な話その魔法のアイテムをナルニアの人々にあげればそれで彼らの抱える問題は解決しちゃうじゃないか。アホらしい。

白い魔女の犠牲になった人々が最終的には全員、息を吹き返すのも如何なものか?人生、こう都合良く何でも事が運べば誰も苦労しないわな。

CGは稚拙。アニメみたいで質感に乏しいし、特殊メイクやミニチュア製作をWETAワークショップが担当しているから登場するクリーチャーたちが「ロード・オブ・ザ・リング」そっくりなのも痛い。演出も下手。アンドリュー・アダムソン監督はもともと「シュレック」などCGアニメーションの人で、実写を撮ったことがないからその経験不足が画面を貧しくしている。それに追い打ちをかけるように、登場する子供たちが一人として可愛くないというのが致命傷である。

まあ端的に言えば、観るべきものはなにもないということだ。それだけ!


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]