2006年03月11日(土) |
ショート・レビュー大放出! |
「ナルニア物語」徹底批判は次回のお楽しみ。
「ホテル・ルワンダ」 評価:A これはもう、文句なしの傑作。説明的にならずにルワンダの政治状況がよく分かるし、手に汗握る脱出劇の緊張感も心地よい。誤解を恐れず書くなら極上のエンターテイメントである。要するに「アフリカのシンドラー」のお話(実話)なのだが、主人公を美化していないことに好感を覚えた。彼は大虐殺が始まった当初、隣人が暴行・拉致されても黙ってそれを見ているだけだし、ホテルに1000人以上の人々を匿ってからも、彼らを廊下に寝かせて自分たち家族は一室を独り占めにしている。そういう描写が人間臭くて非常にリアリティがあった。
「ジャーヘッド」 評価:B 戦闘場面のない異色の戦争映画。途轍もない変化球である。海兵隊が砂漠に到着した辺りから画面の質感が変化し、めくるめく異世界が展開する。まるで「地獄の黙示録」終盤に現れる、カーツ大佐が密林の奥に築いた王国の場面みたいだ。ジャーヘッド(海兵隊員)・イン・ワンダーランド。お話は詰まらないがサム・メンデスの演出は素晴らしい。またメンデスは「キャバレー」「ジプシー」など舞台ミュージカルの演出家でもあり、音楽の出し入れが実に巧みだ。
「ウォーク・ザ・ライン/君に続く道」 評価:C- アカデミー賞授賞式でも揶揄されていたけれど、これは明らかに「Ray/レイ」の主人公を白人に置き換えただけのリメイクである。ミュージシャンの伝記物ってどうしてこう金太郎飴なんだろう?結局<ドラックに溺れる→周囲の献身的愛情で更生する>というパターンならハッピーエンドで商業映画になるけれど<ドラッグに溺れる→身が破滅する>では誰も見てくれないということなんだろう。現実は後者が多いのに。凡庸で極めて退屈な映画なので途中に退席したくなるが、主演ふたりの熱演(特にその見事な歌唱!)で何とか最後まで耐えられた。リース、オスカー主演女優賞おめでとう。
「シリアナ」 評価:D 米国の石油利権を守るために、CIAが産油国の王子を暗殺する話。ただそれだけの内容なのに脚本が意味もなく複雑・散漫で気取りすぎ。錯綜するプロットが分かり難すぎる。盛り上がりにも欠け、全く観る価値なし。スティーヴン・ギャガンの演出は手持ちカメラで画面を揺らし臨場感を出そうとするなど、明らかに「トラフィック」(ギャガン脚色、スティーヴン・ソダーバーグ監督)の真似に過ぎない。貴男、演出の才能ないよ。これでアカデミー助演男優賞を受賞したジョージ・クルーニーの演技はオスカーに値するものではない。結局、授賞式で本人も言っていたけれど「グッドナイト&グッドラック」に作品賞や監督賞を与えることが出来ないことに対しての<残念賞>的意味合いが強いのだろう。
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