2005年08月15日(月) |
亀は意外と見応えがある。 |
奥田英朗の「イン・ザ・プール」と直木賞を受賞した「空中ブランコ」という二つの小説は実に面白い。その最大の魅力は精神科医:伊良部先生の放埒なキャラクターに負うところが大きい。しかし三木聡監督の映画版「イン・ザ・プール」には結局全く食指が動かなかった。その最大の原因は伊良部先生に大人計画の松尾スズキをキャスティングしたことにある。これはテレビ版「空中ブランコ」で伊良部先生を阿部寛が演じたのと同様に、絶対にあってはならないキャスティングだからである。小説と映画は別物であることは十分承知しているが、物事には限度というものがある。上記行為は人としての節度を明らかに逸脱した暴挙である。
だから映画「イン・ザ・プール」を観ることなく三木聡さんの脚本・監督第二作である「亀は意外と速く泳ぐ」を体験することとなった。これは意外と面白く、拾いものである。評価はB。
全体に流れるゆる〜くてなんだか変な空気が妙に心地よい。小ネタのジョークを羅列したような構成で脚本自体が実に緩い。だから物語性などあって無きが如きなのでそういう意味でこの映画が醸し出す雰囲気にノレるかノレないか、観客を選ぶ映画といえるだろう。
現在日本映画を牽引する十代の若手女優といえば、上野樹里と蒼井優を真っ先に想い浮かべるが(実は調べてみると蒼井優はこの8/17に二十歳の誕生日を迎えるそうである)、その今まさに旬なふたりが競演しているというのも見逃せない要素である。
蒼井優は不思議な女優である。掴み所がないと言い換えても良い。多分彼女を映画で初めて観たのは2001年に公開された「リリイ・シュシュのすべて」の筈だが、全く記憶に残っていない。次に観たのが塩田明彦監督の悪意に満ちた傑作「害虫」(2002)なのだが、彼女は宮崎あおいの通う中学校のクラスメイト役だった。この優等生役も印象が薄かった。彼女の魅力が突如大爆発して瞠目させられたのが「花とアリス」である。
蒼井優はおとなしい美少女役の時は影が薄い。むしろ彼女の内包するパワーが全開するのはどこか風変わりなキャラクター、ド派手な服装をしたり蓮っ葉な喋り方をしたりする役柄を演じた時である。そういう意味で「亀は意外と速く泳ぐ」の役どころは正にドンピシャ。水を得た魚、もとい、亀のように生き生きと彼女はスクリーンを泳ぎ回った。今回は上野樹里がその勢いに気圧されているみたいに見受けられた。
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