2005年04月09日(土) |
ハードボイルドに生きる子供たち<カナリア> |
<害虫>、あるいは塩田明彦の軌跡というタイトルで筆者が日誌を書いたのは2002年8月10日のことである。
オウム真理教の施設で生活していた信者の子供たちをヒントに塩田が製作した新作「カナリア」を観た印象は「害虫」の頃と大きく変わらない。相変わらず塩田は子供の扱いが巧いし、兎に角彼の映画に登場する子供たちの生き方は実にハードボイルドである。子供たちは彼ら自身の世界を既に確立しており、大人の思惑とは無関係に、決して妥協することなく逞しく生きていく。その姿勢が実に清々しい。それは劇場映画デビュー作「どこまでもいこう」(1999)の頃から一貫している。
「カナリア」の評価はB+。実に見応えのある傑作である。少々プロットに無理も感じるが、そんなことは作品の圧倒的力強さの前では些事にすぎない。有無を言わさぬ説得力。癒し系に走ったあの「黄泉がえり」での<変節>はいったいなんだったのか??
「カナリア」の作品のスタイル、子供たちの生きざまはかなり「害虫」に近いが、「害虫」の主人公は中学生だったのに対し本作は小学生。そういう意味では「どこまでもいこう」との親和性も感じる。いずれにせよ塩田明彦らしい映画を久しぶりに観ることが出来て、実に満ち足りた感触の残る作品であった。
やっぱり東野圭吾の傑作ハードボイルド小説「白夜行」を映画化出来るのは塩田しかいないなぁ。ただしヒロインを「黄泉がえり」の竹内結子にするのだけは勘弁してね(本人はやる気満々で東野との対談でも必死にアピールしていた)。
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