エンターテイメント日誌

2005年04月02日(土) 豊穣なミステリー<ロング・エンゲージメント>

「ロング・エンゲージメント」は監督も出演者もフランス人で、舞台もフランスであり、れっきとしたフランス映画である。しかし製作はワーナー・ブラザースであり、アメリカ資本だ。予算のかかる大作であり、だからこういう形を選んだのだろう。

フランスではこれがフランス映画と言えるのかという論争が巻き起こった。しかし最終的にそれは認められ、セザール賞で有望新人男優(ギャスパー・ウリエル)、助演女優(マリオン・コティヤール)、撮影、衣装、美術の各賞を受賞することとなる。

この映画で特筆すべきはアメリカ撮影監督組合(ASC)賞を受賞し、アカデミー賞にもノミネートされたブリュノ・デルボネルによる映像の美しさである。戦場の場面では青を基調とした寒色系で撮られ、一転ヒロインが登場する場面ではオレンジを基調とした夕刻の色彩が支配的となる。それは日が沈んでからの20分、世界が最も美しく見えると言われる時間帯=<マジック・アワー>にほとんど撮影された名作「天国の日々」(撮影監督:ネストル・アルメンドロス)を彷彿とさせる。これだけ完璧な映像美にはそう滅多にお目にかかれるものではない。筆者の本作に対する評価はAを謹んで進呈する。

この映画の肝はミステリーであり、戦場で死刑を宣告される兵士が5人、さらにその家族とか愛人とか人物がたくさん登場するので顔と名前をしっかり覚えておかないと途中で混乱するのは必定である。筆者もその例に漏れず、結局二回目の鑑賞で漸く全体を把握することができた。これからご覧になられる方は、映画紹介ページの人物関係図などで事前に予習されておかれることをお勧めする。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]