エンターテイメント日誌

2004年02月09日(月) そして旅は終わる〜<王の帰還>とサルマン

「ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔」スペシャル・エクステンディッド・エディションDVD(劇場版でカットされたボロミアとファラミアのエピソードは必見!)に収録されているドキュメンタリーを観ると、当初「二つの塔」はクリストファー・リー演じるサルマンと旅の仲間たちの対決で幕を閉じる予定だったそうだ。しかし編集段階でピーター・ジャクソン監督は上映時間が3時間以上経過した段階でサルマンの演説シーンを持ってくると、観客を退屈させてしまい集中力が切れると判断し、その場面をカットし「王の帰還」の冒頭に持ってくることを決めたと語っている。

しかし蓋を開けてみると、「王の帰還」ではサルマンは一切登場しないという非常に不自然なことになってしまった。「王の帰還」の冒頭にサルマンの場面を持ってきてもどうしても収まりが悪く、結局サルマンとの対決シーン挿入は最終的に見送られたのだ。そしてクリストファー・リーはこれを聞いて激怒したという。それも当然だろう。リーは毎年一回は原作の「指輪物語」を読み返すという熱心なファンで、原作者のトールキンとパブで言葉を交わしたこともある間柄という。さぞやその胸中、無念であったろう。

「王の帰還」の冒頭部はかつてホビットだったスメアゴルがいかにして指輪の誘惑に負け、ゴラムとして餓鬼道に墜ちたかということが詳しく描かれる。これはアンディ・サーキスという素晴らしいゴラム役者の出現で膨らんだエピソードなのだが、ロード・オブ・ザ・リングという作品世界を理解する上で必要不可欠なシーンであった。そして確かにスメアゴルのエピソードの前後でサルマンが登場すると映画の流れを妨げるというジャクソン監督の判断は正しかったと認めざるを得ない。サルマンの雄姿を今回観ることが出来なかったのは返す返すも残念だが、結果的には仕方なかったのだろう。

それにしても「王の帰還」、怒濤の展開で息つく暇もない。上映時間3時間23分があっという間に過ぎていく。ただし、贅沢を承知の上で苦言を呈すなら指輪を葬った後のエピソードが冗長で、これは多少カットしても良かったのではなかろうか?灰色港の場面で潔くエンド・クレジットに移行するという選択肢もあったのではという気がする。

まあしかし、視覚効果や音響効果は相変わらずの超一級品で他の追随を許さない。特に巨大蜘蛛の造形は秀逸で圧倒的存在感があり、同様のキャラクターが登場した「ハリー・ポッターと秘密の部屋」と比較するとその出来は雲泥の差だった。さらに、狼煙(のろし)の炎が山の頂から山の頂へと次々と点火されていく映像が雄大で圧巻、嗚呼これぞ映画を観ることの醍醐味だなぁと魂が震える覚えがした。

サムは逞しく成長し頼りになるし、アラゴルンは相変わらず凛々しい。そしてレゴラスの「二つの塔」に続くあっと驚く曲芸技には大爆笑。特に最後に澄ました顔で決めるのが憎いね〜。レゴラスとギムリの和気藹々とした愉しい掛け合いももうこれで見納めかと想うと名残惜しい。しかしまだ、私たちには「王の帰還」のスペシャル・エクステンディッド・エディションで、もう一度未知なる世界へと旅をする機会が残されているという事実を今は神に感謝するべきだろう。噂によると今度は遂に4時間を超えるものになりそうである。ありがとう、ロード・オブ・ザ・リングとその壮大なる旅の仲間たち。また逢う日まで!


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]