昨日のエイプリル・フールねたは愉しんで頂けただろうか?貴方がジョークの分かる度量の大きな人であることを期待する。
さて、<オスカー効果>という呼び方をご存知だろうか?アカデミー賞を受賞した作品は必ずヒットするという法則である。少なくともこれは日本では大いに有効だ。古くは「クレイマー・クライマー」の頃から最近の「恋に落ちたシェイクスピア」や「ビューティフル・マインド」まで着実な興行成績を稼いでいる。
この効果の威力をまざまざと見せつけられたのは「シンドラーのリスト」だった。この映画は授賞式の前から劇場公開されていた。作品賞・監督賞の受賞は確実だったので僕は<オスカー効果>を恐れて授賞式の前日に観に往った。その日の観客の入りは7割り程度だったろうか。しかしアカデミー賞が発表されると同時に様相は一変した。観客は授賞式の翌日から倍増し、映画館は立ち見どころか劇場に入れずにスゴスゴと帰ってきたという話をあちらこちらで聞いた。
ところがこれがカンヌとかベネチア国際映画祭ではそのご威光は非常に低い。ベネチアでグランプリを受賞しても北野武のHANA-BIは興行的に惨敗。劇場はがらがらだった。日本人が如何に米アカデミー賞<だけ>を盲信しているかが良く分かるだろう。
だから配給会社はその恩恵に与るために有力候補作品は授賞式後に公開したがる。その典型例がアメリカでは昨年末に公開され日本では今月公開予定の「シカゴ」だろう。また、現在公開中のドキュメンタリー映画「ボーリング・フォー・コロンバイン」もマイケル・ムーア監督のあの衝撃のスピーチのおかげで大反響、大入満員と聞く。配給会社の思惑が見事に奏功した。
では、アメリカ本国では<オスカー効果>はどうなのだろう?それを具体的に検証してみよう。そこで授賞式を終えた先週末の北米興行成績ランキングを見てみよう。まず何かと話題の「ボーリング・フォー・コロンバイン」だが、1週間前に37位だったのが29位と一気に上昇している。作品賞授賞の「シカゴ」は6位から5位へ、監督賞など3部門受賞した「戦場のピアニスト」は15位から11位へ成績を伸ばした。また、外国語映画賞を授賞したドイツ映画「名もなきアフリカの地で」は43位から26位への昇進である。逆に転落の道をたどったのがひとつも授賞出来なかった「ギャング・オブ・ニューヨーク」。22位から33位へ一気に落ち込んだ。
それにしても今回なによりもその恩恵に与ったのは我が国の誇る「千と千尋の神隠し」だろう。公開当初から批評家からは絶賛されたにもかかわらず配給元のディズニーが売ろうとする意欲を全く見せず公開劇場数は最高時でも151館に留まり、興行的には成功しなかった。このディズニーの姿勢はマスコミからも激しく非難を浴びた。しかし、この度長編アニメーション賞を授賞したご褒美に一気に劇場数は711館まで増え、今回ばかりはディズニーも大々的に宣伝してくれた。その効果を見よ!なんと1週間前のランキングでは81位だったのが一気に15位まで到達したのである。<オスカー効果>は確かに本国にも存在した。
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