雑誌「このミステリイがすごい!」で年間ランキング堂々第一位を獲得した桐野夏生原作「OUT」が映画化された。
20世紀フォックスが初めて配給する日本映画である。スターウォーズでおなじみのあのロゴの後に日本映画が始まるというのも不思議な体験であった。
原作は未読だが特に映画の後半、相当脚色があるらしく原作ファンからは非難の声が上がっている。しかし長大な原作を2時間弱とコンパクトに見事にまとめているし、脚色されたことによる違和感もなかった。バラバラ殺人を扱っているので一歩間違えば猟奇的で気持ちの悪い後味になる一歩手前でとどまり、寧ろユーモラスで日常感覚のある場面に仕上げているのには舌を巻いた。脚色にあたった鄭義信の勝利である。鄭義信は崔洋一と組んで、宮部みゆきの大傑作ミステリイ「火車」のシナリオを既に完成させているらしい。それが日の目を見る事を心より願う。
監督は平山秀幸。最近では「愛を乞うひと」「ターン」などでその実力の程を存分に世間に認知させた。今回も手堅くクールな演出で安心して観ることが出来る。
「愛を乞うひと」で平山と組んで主演女優賞を総なめにした原田美枝子が今回も素晴らしい。中年のおばさんなんなのに艶やかで色っぽいし、とにかく颯爽としていて恰好良い。
物語の中心となる4人の女達がそれぞれ生き生きしていて良いが、特にブランド好きの女を演じた室井滋が意外な拾い物だった。彼女のコメディセンスが遺憾なく発揮され、 一番笑わせてくれた。
題材は暗いのに、観終わった後に清々しいような一陣の風が吹き抜ける、そういう映画である。
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