2002年06月14日(金) |
今年のトニー賞とブロードウェイの現在 |
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ブロードウェイ・ミュージカルは1980年代、ロンドンのウエスト・エンドからやってきた英国産ミュージカルに席巻された。ロイド=ウェバー作曲の「CATS」、「オペラ座の怪人」や、あるいは「レ・ミゼラブル」、「ミス・サイゴン」といったスペクタクル・ミュージカル群がその代表であった。しかしその後、ウェバー作品にヒットがなくなり、ロンドン産ミュージカルは失速していった。では1990年代以降、ブロードウェイ産作品は復調したかというとどうも心許ない。近年のトニー賞受賞作を見ても、「ジェローム・ロビンス・ブロードウェイ」や「フォッシー」は過去の名作からのハイライトの寄せ集めに過ぎないし、「ライオンキング」は元々、ディズニーのアニメーション。昨年トニー賞を総なめにした「プロデューサーズ」や今年の作品賞受賞作「モダン・ミリー」は過去の有名映画を元に、それを舞台用に脚色し新曲を加えたという構成なのである。「42ND STREET」だってそうだ。どうも僕に言わせるとオリジナリティが欠如しているとしか想えないのである。
確かに有名な映画やアニメを素材にすれば知名度は抜群だから集客力が期待できるし、製作費用が膨大に膨れ上がっているブロードウェイの現状では失敗は許されない。リスクを冒さず、確実な道を製作者たちが取りたがるのもよく理解できる。しかし、である。そんな映画などからの「借り物」を舞台にかけて、貴方達は舞台人としての誇りはないのか?と問いたい。もっと舞台ならではのオリジナリティのある作品で勝負して欲しい。今の低迷するブロードウェイの実情から考えると、三谷幸喜さん作の大傑作ミュージカル「オケピ!」なら十分本場でも太刀打ちできるだろう。後は英訳してプロデューサーを探すだけだ。三谷さんがトニー賞授賞式で受賞スピーチをする日も決して遠くはないと確信する今日この頃である。
今年のトニー賞受賞作の中では「モダン・ミリー」には全く食指が動かないが、リバイバル賞を受賞したスティーブン・ソンドハイム作詞作曲の「イントゥ・ザ・ウッズ」は是非観てみたい。これは初演の舞台がDVDで発売されており、僕の手元にもある。グリム童話を元にした大変ファンタジックで楽しいミュージカルである。 桐生操著『本当は恐ろしいグリム童話』がベストセラーになったことだし、そろそろ日本での上演も機が熟した頃じゃないだろうか?
それにしても結局今年のトニー賞でひとつも受賞できなかった「マンマ・ミーア!」、日本でもこの12月から劇団四季が上演することが決っているのだが、この中身が薄くてノリだけが勝負のミュージカル、果たして日本の観客に受け入れられ、ヒットするのだろうか?甚だ疑問である。だって今更アバ(ABBA)ですよ!?
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