「アメリカの悲劇」…1931年製作された映画のタイトル。ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督。「陽の当たる場所」はこのリメイクである。
ニューヨークやワシントンなどで信じがたい惨事が起った。僕は先月NYにいたので、戦慄を覚えずにはいられない。
ワールド・トレイド・センターには107階に「ウインドウズ・オン・ザ・ワールド」という有名なレストランがあって、実はそこに予約を入れていたのだが、当日高熱が出て結局キャンセルしていたのだ。
まるでSFXを駆使したハリウッドの大作映画を観ているような、全く実感を持てない出来事であった。もし幸いにもこれが本当に虚構の物語であったとしたら、
「アメリカみたいな危機管理体制(crisis management system) が徹底した国で、航空機4機を同時にハイジャックするなんて、 現実的に無理に決まっているさ。馬鹿馬鹿しい。」 「マンハッタンの並び立つビル2つに、それぞれ飛行機をぶつけるなんて、そんなこと可能な訳ないだろう。それだけの高度なフライト技術を持ったテロリストなんて存在する筈ないじゃないか。」 「ペンタゴンに飛行機ごと突っ込む?全くナンセンスな計画だね。途中で撃墜されるに決まっているだろ。だってアメリカ国防の要(かなめ)、ハイテクの要塞だぜ。」
そう笑い飛ばしたことであろう。しかしそれは現実に起きた。これは夢ではないのである。
日本テレビは9/14に予定していた、NYを舞台にテロリストとの戦いを描く映画「ダイ・ハード3」のテレビ放送を中止した。また、10/5に予定されていた映画「コラテラル・ダメージ」の公開も延期された。アーノルド・シュワルツェネッガー演じる消防士が爆弾テロで妻子を失い、テロリストに復讐するというストーリーだそうだ。
つい先日、僕がミュージカルを楽しんだブロードウェイの劇場街は閉鎖された。また、遠くロサンゼルスでも標的目標になる可能性があるとして、ハリウッドのスタジオも撮影を中止し、全員帰宅したという。今回の悲劇がもたらした暗雲は、濃く霧のように立ちこめ、一寸先も見えない。
ただこのことだけは言っておかねばならないだろう。アメリカでは今回の衝撃を「真珠湾攻撃以来」と表現するメディアが多いという。確かにテロリストの行為は「神風特攻隊」を連想する。
しかしその比較はフェアではない。真珠湾攻撃はあくまで軍事施設を狙った戦争行為である。日本軍は民間人を標的にしたのではない。しかし今回のテロ行為は民間人を巻き込んだ「無差別殺人」である。そういう意味では広島・長崎への原爆投下の行為に近い。
これはテロリストの理屈を正当化しようと言っているのでは全くない。どちらも人道的に許されざる蛮行であると述べているのである。
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