2001年09月11日(火) |
ヴェトナム=非ヴェトナム |
東京渋谷のBunkamuraル・シネマで連日大入り満員の大ヒット、スタバ (スターバックス・コーヒーのこと)のドリンクを片手に、若い女性 達が大挙押し寄せているという、今最もお洒落な映画「夏至」を観た。 ヴェトナムとフランスの合作である。
トラン・アン・ユン監督の作品は処女作「青いパパイヤの香り」を 観ている。ベトナム生まれ、フランス育ちのこの監督の処女作は ヴェトナムを舞台にしながら、撮影はフランスでセットを組んで 行ったという摩訶不思議なテイストの映画であった。 ヴェトナムを描きながら、その実フランス映画としか言いようがなく、 心から素直に愉しめなかったのである。
「夏至」はヴェトナムでロケをされ、それぞれが秘密を心に秘めた 3姉妹の物語である。映画の最後にこれといって問題が解決される 訳でもなく、ある日常の断片を切り取ったという風情の、淡々とした 作品であった。雨や瓶に汲まれた水、あるいは海といった「水」の イメージが全体を支配している。人物描写にユン監督の映画作家としての ある種の成熟を見るが、やはり「ヴェトナム映画」という雰囲気が 全くしないんだよね。ヴェトナムの匂いもしなければ、うだるような ヴェトナムの熱風も感じ取れない。これが僕がこの映画を 「ヴェトナム映画でありながら非ヴェトナム映画」と呼ぶ由縁である。
この映画のフランス的アンニュイな雰囲気を良しとするか否とするかは 各人の感性の問題であろう。僕のスタンスはどちらかと言えば後者に近い。
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