エンターテイメント日誌

2001年05月09日(水) <トラフィック>を観終わって残るもの

スティーブン・ソダーバーグ監督作品はカンヌ映画祭でグランプリを受賞した彼の処女作、「セックスと嘘とビデオテープ」を観ている。これを観て感じたのは「ソダーバーグってまず頭で考える監督だなあ。」ということ。なんだか理屈っぽくて余り感情移入できる要素がなかったのだ。
同様の感覚を新作「トラフィック」でも味わった。ドキュメンタリータッチで硬質な印象。3つの場所で起こるエピソードを巧みに絡ませて最後にそれらが収斂していく脚本は見事の一言だし、そのそれぞれを「画調(質感)の違い」で描き分けた演出は成る程面白くて分かり易いのだが、「上手い」というただそれだけで、映画を観終わった後の感銘というか充実感が希薄なのだ。つまり、この映画は麻薬を主題にしているがそれはただの「素材」に過ぎず、其処に込められた製作者の想いがこちらに伝わってこないのである。
だからアカデミー賞で脚色賞や監督賞を受賞したのは「技巧賞」として頷けるし、それにもかかわらず作品賞を受賞できなかったということも、アカデミー会員の見事な判断だったと今更ながらに関心してしまう。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]