神戸に出張で行き、ついでに映画館に立ち寄り「シベリアの理髪師」を観た。劇場は狭く汚く、これなら地方に続々出来ているシネマ・コンプレックスの方がよっぽどいい環境だなあと半ば呆れた。古くからの映画館が老朽化したまま存続する、都会の欠点を垣間見た想いがした。 映画は大甘のメロドラマ。これを撮ったロシアの監督は、大評判だった「黒い瞳」の頃は(やはりメロドラマ仕立てだったが)まだその作風に品格があったように想う。この作品で致命的なのはヒロインのジュリア・オーモンドが貴婦人としての気品に欠けることだ。厚かましくて、米国からロシアにやって来たくせに全て英語で通そうという態度にも腹が立つ。大層むかつく女だ。舞台は革命前のロシアなのに、英語のダイアログが不自然に多いのが気になった。ロシア国内だけでは映画の制作費が調達できず、外国の資本に頼らざるを得ない現在の監督の苦渋もよく判るんだが。
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