東京の片隅から
目次きのうあした


2020年10月30日(金) 「死ぬ間際」

今年のフィルメックス1本目。

アゼルバイジャン映画である。
舞台となっているアゼルバイジャンに対する知識もこちらには乏しく、首都がバクーで油田があると習ったのはまだソ連だった頃だ。映像の中で遠くにそびえ立つ煙突の群れはその関連施設だろうか。
ひょんなことから殺人を犯してしまった主人公が逃亡する先々で死者が発生する。残された人々に妙に感謝されるから、死神なのか救世主なのか、こちらにはわからない。
湿地と草原の起伏の中、主人公とその追っ手があちこちへ移動するのだが、背後の風景が面白い。
巨大な煙突が並ぶ地平線の手前に風力発電用の風車が並んでいたり、追っ手が乗っている車がどれも相当古かったり、20世紀と21世紀が混じり合った不思議な世界。
モノローグも詩的。ちょうどその場にいたので持ち主に借りて撮影したという白い馬も絵のようだ。
あれこれ解釈するよりも画面のまま受け止めるタイプの映画。シュールで詩的な映像はタルコフスキーかソクーロフかはたまたアンゲロプロスか。

上映後にQ&Aコーナーがあったのだが、このご時世なので、リモートで行われた。
監督は映画祭で滞在中のエジプトから参加。
観客からの質問はQRコードを読み取ってメールで送るシステム。
質問が簡潔になり、かつ、事務局側で内容を確認して取捨選択できるため、普段の質問なのか自分語りなのかわからない謎質問はカットでき、内容に関する質問を的確にピックアップできる。なかなかいいシステムだと思う。
質問する側もアゼルバイジャンについての知識が少ないため、まずは当地での映画・テレビ事情から質問が始まり、監督がユーゴスラビアで映画を学んだこと、滞在費は賭けチェス(!)で稼いでいたこと、大学では美術や映画ではなく数学を学んでディプロマを持っていること、風景は連続したものではなく、国内のあちこちで撮影したこと、死にゆく母は実際の監督のお母さんで内容についていろいろ言われたこと、等々、知りたい&伝えたいが噛み合う面白いQ&Aだった。


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