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2004年02月28日(土)
◆『アナニアシヴィリの白鳥の湖』 アナニアシヴィリ、ウヴァーロフ、フィーリン、クレフツォフ、ペトローワ、パーリシナ他 (04/03/08up)


東京文化会館 14:00〜

芸術監督:アレクセイ・ファジェーチェフ
指揮&ヴァイオリン:セルゲイ・スタドレル
(演奏:東京ニューシティ管弦楽団)



お久しぶりのニーナ・アナニアシヴィリのグループ公演。以前はパ・ド・ドゥ部分が多い、お祭りガラのような公演でしたが、今回は作品そのものを見てもらうという趣旨に、移行してきたような気がします。
3つの作品それぞれ雰囲気が違い、なかなか楽しいひとときでした。
でも最後まで観て、やっぱりニーナはクラシカルな作品で、より輝くような印象は変りませんでしたが...。

今回は、当初予定されていた、マリインスキー・バレエのイルマ・ニオラーゼの代わりに、彼女と同じ故郷グルジアのダンサー、ラリ・カンデラキを起用。(ニーナは、ニオラーゼといい、カンデラキといい、同郷で頑張っているダンサーを大切に思っているんですね)

指揮者も、体調不良の為、来日出来なくなってしまったソトニコフさんの代わりに、セルゲイ・スタドレフさんが務められました。
この方はヴァイオリン・ソロも同時に演奏され、彼のおかげでかなり個性にとんだバレエ公演になりましたね。

スタドレルさんは、ヴァイオリニストとして、驚くほど数々の賞を獲得されている実力者のようで、例を挙げるとプラハ国際、ロン=ティボー、チャイコフスキー・コンクールなどで優勝&金メダル、その後ペテルブルグやモスクワでオペラやバレエの音楽監督や指揮者を務めていらっしゃるそうです。
検索してみたら、過去にモスクワ放送響でファドセーエフ指揮のもと、チャイコのコンチェルト演奏の為に来日していたり、ソリストとして活躍なさっていたようですね。

ニーナの公演では指揮をしながら、ソロ・ヴァイオリンが入る箇所で、いきなり客席の方を向き演奏開始。ソロが終わるとまたオケの方に向きなおす、という特殊なやり方をされていました。
私は正面の席ではなかったですが、舞台に近かったので、彼の派手に動く演奏姿が目に入り、神経がそちらに行ってしまうこともしばしば...。 
指揮者近くの観客は、あの大きなお姿と激しい動き、それに迫力ある演奏で、一時はバレエより彼が気になったのではないかしら。

日頃のバレエ公演で聴くような、踊りの伴奏演奏というより、音量的にもフレーズひとつ取っても大変個性的で、私は面白かったのですが、観客は意見の分かれるところかもしれません。



 ◆『グリーン』

音楽:ヴィヴァルディ (オケ演奏 30分)
振付:スタントン・ウェルチ


ニーナ・アナニアシヴィリ
セルゲイ・フィーリン
ドミトリー・ベロゴロフツェフ
コール・ド・バレエ


この作品はヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲に触発された、現在ヒューストンバレエに芸術監督で振付家のウェルチが、ニーナ、フィーリン、ベロゴロフツェフ&モスクワ・ダンス・シアターの為に創作した作品との事です。
事前にチラシ等のイメージでは、緑のロマンティック・チュチュ型の衣装を着た群舞が幻想的に写っており、ゆったりとした柔らかな印象の作品かなと思っておりましたが、実際には、快活でテクニカルな男性群舞や、早めのバロック音楽にのった鮮やかなステップ部分も多いものでした。
きちんと覚えてはいませんが、男女各8人の群舞が登場する場面は明るめの曲調。ニーナとベロゴロフツェフ、またはニーナとフィーリンによるパ・ド・ドゥ場面はしっとりとした雰囲気で、たっぷり魅せてくれます。

素敵だったのは、何といってもフィーリン。 ステップの正確さ、全てにおいてフォームが美しくて崩れのない踊り。彼は、私の中では見るたび印象が良くなっていきます。
それに、どのようなスタイルの踊りでも、幅広く自分のモノにしする能力のある方ですね。
以前より髪が長くフワッとさせていて、いっそう麗しかったです。

ニーナはこのようなシンフォニック・バレエ作品では、悪くはないんだけれど、他を圧倒するすごさは、それほど感じられなかったかな。
それでも踊りの大きさは、彼女ならではですし、本人のもつパーソナリティーが舞台を彩っていました。
ベロゴロフツェフも良く踊っていますが、この作品ではフィーリンに比べるとインパクトは弱かったかかも。

衣装は全員タイトルどおりグリーンカラーです。ニーナは灰色がかったモスグリーンのロマンティック・チュチュ風で、女性群舞はもう少し明るい若草色。ベロゴロフツェフとフィーリンは下だけのタイツ姿で、男性群舞はユニタードでした。



 ◆『セコンド・ビフォー・ザ・グラウンド』

音楽:アフリカン・ミュージック (テープ演奏 30分)
振付:トレイ・マッキンタイアー


インナ・ペトローワ
エレーナ・パーリシナ
ラリ・カンデラキ
ドミトリー・ベロゴロフツェフ
セルゲイ・フィーリン
ユーリ・クレフツォフ
コール・ド・バレエ


アメリカの振付家マッキンタイアーが、ヒューストン・バレエの為に創作した作品。
解説によれば、アフリカ諸部族に伝わる、《死の1秒前に、人はそれまでの人生の幸福な時間と最も重要な瞬間のすべてを思い出す》という考え方にインスピレーションを受けて創られたとのことです。 日本的に言えば、死ぬその一瞬に「人生が走馬灯のように見える」とよく聞きますが、それに近い意味なのかもしれませんね。

で、このように書いてあると、何だか重たそうな印象を持ちそうですが、実際は気持ち良い、幸福感に満ちた作品でした。
出演者が皆、楽しそうに踊っていたのが印象的ですね。
使っている音楽はアフリカン・ミュージックだそうですが、思ったより洗練されていて、アメリカ南部風、田舎風?な心地の良い感じかな。

カンデラキ&ベロゴロフツェフ組、ペトローワ&フィーリン組、パーリシナ&クレフツォフ組の順番に登場し、場面が変ってもひたすら幸福な世界を見せてくれます。舞台背景の色調が3組それぞれ変化し、見ようによっては、朝昼夜の風景にも見えました。
そしてどのペアもとても楽しげなこと!

久しぶりに観たペトローワってビックリするほど表情豊かでまろやかな雰囲気、スタイルも昔のまま美しかった。前回(2001年)、2人とも公演に参加していたのに、なぜかフィーリンと組んで踊らず残念に思いましたが、今回はあの幸せそうなペトローワの表情見れただけで満足です。フィーリンはやっぱりいいですね。
パーリシナ&クレフツォフ組は以前『スパルタクス』でも見ましたが、パリーシナはあの時より更にベテランの熟成というか、カッコ良さを感じました。とても動きのキレが良くて、難しい踊りも安心して見ていられる。
そしてペアとしてとても合っていますね。威厳も感じられた。




 ◆『白鳥の湖』ハイライト

音楽:チャイコフスキー (オケ演奏 55分)
原振付:プティパ、 追加振付/演出:ファジェーチェフ


オデット/オディール: ニーナ・アナニアシヴィリ
ダンサー/ジークフリード王子: アンドレイ・ウヴァーロフ

芸術監督/悪魔: イラクリ・バフターゼ
王妃: ショレナ・ハインドラワ
コール・ド・バレエ


オーケストラの序曲が始まる。
幕が開くとそこはバーや鏡が据えられたバレエのリハーサル・スタジオ
オーケストラの旋律は、そのままピアノに変る。
レッスン中ながら、芸術監督はプリンシパル(ウヴァーロフ)の出来に不満で緊張感のある空気があたりを包んでいます。
次第に他のダンサーはその場から去り、芸術監督も重い空気のまま去ってゆく。
疲れたプリンシパルは、バーの近くでうたた寝をする。

そしていきなり舞台は本来の『白鳥の湖』第2幕(or1幕2場)の場面に変ります。
ウヴァーロフはジークフリード王子になり、夜の湖を彷徨っている。(つまり眠っている間の夢のお話ということか)
あとは普通のダイジェスト版『白鳥の湖』でした。

ニーナの『白鳥の湖』を観たのは2度目。前回はABT日本公演の時です。
その時はどうしてもニーナの元気よさばかり気になって、柔らかく踊っていたけれど白鳥としてはそれほど印象深く感じませんでした。(少々雑だったかも...)

で、今回ですが、円熟と言ったらまだまだお若く見えるので失礼かと思いますが、とっても大きな踊りで美しかったです。
儚いとか、助けてあげたいとかそういうのではなく、悲劇に対しても受け止める強さや、大きな優しさを感じました。
柔らかくしなう肢体が見事。グラン・アダージョの滑らかさは秀逸ですね。
ウヴァーロフ王子もとても美しいし...。
でも、ヴァイオリン・ソロのスタドレルさん、やたら目立っていたなぁ。何度か指揮者の方を見てしまいました。

黒鳥の方はニーナの真骨頂といった感じでとても華やか。誰もが自然に目を奪われてしまいますね。
フェッテは以前みたいに物凄いスピードで回るというより、ちゃんと丁寧に踊っていました。
黒鳥のヴァリは、ボリショイと同じ妖しげな音楽の方。(ABTでもニーナはこちらのヴァリでした)

王子のヴァリもボリショイと同じ、チャイコフスキー・パ・ド・ドゥの曲を使用。
舞踏会の場面では花嫁候補の踊りもしっかりありました。
悪魔ロットバルト役は、あの(折り合いの悪かった)芸術監督という演出です。
王妃役は、若いダンサーが演じていましたが、無表情で無味乾燥。

舞踏会の場面で王子が悪魔に騙されて城は大混乱へ...と、ここで、元のリハーサル室の場面に戻ります。
プリンシパルはうたた寝から目を覚まし、夢の続きのように白鳥オデット現れ、そして消えてゆく...。

あらすじでは、夢から覚めたところで、「自分が恋人を裏切ったことを理解する」と書いてあるのですが、演出が説明不足で理解不能。あとから、「へぇ〜」でした。
ファジェーチェフのハイライト版は、工夫はされているようですが良くなったようにはあまり思えません。
でも、この短い時間に、見たい踊りは挿入されていたし、ニーナやウヴァーロフ、そしてコール・ド達の豪華な踊りが観られたので、満足です。
とにかく“ロシア・バレエ”を存分に楽しませていただきました。


*最後に一言、
こういった全幕でない公演にもかかわらず、(白鳥で)コール・ド・バレエを24人揃えたのには驚きました。(男性ダンサーもソリスト以外に8人連れてきたし...)
しっかりと作品を見せたいという意思を感じましたね。

しかし不満な点もあります。ニーナ達以外は、公演パンフレット等に、大事な役を踊ったダンサーでさえ、どこのバレエ団から参加したのか一言も書かれていないこと。結局どこのコール・ドだったのか...。
せっかく一生懸命に踊っているダンサーや、観に来ている観客に対しても不備だと思いますが。



【特別アンコール】

大きな喝采と共に幕が閉じると、芸術監督のファジェーチェフさんがマイクを持って登場。
姿を見たとたん、恒例の「おまけ」だなと察した私はとても嬉しい気分になりました。 ニーナをはじめとする出演者達の温かな気持ちと誠意を感じますね。


 ◆『スパルタクス』より《スパルタクスとフリギアのアダージョ》
音楽:チャイコフスキー、 振付:グリゴローヴィチ
(エレーナ・パーリシナ&ユーリ・クレフツォフ)


この作品&このパ・ド・ドゥはとても大好きで、観る度に新たな感動を覚えます。
音楽も踊りもとにかく美しくて、男性の力強さ、女性のたおやかさが存分に表されている作品だと思います。
パーリシナ&クレフツォフは数多く演じてきたとみえて、胸に迫るような深みのある踊りは本当に素晴らしかった。
この演目の主人公のようにお互いを思いやるカップルの、年を経て到達した熟練の世界に酔いしれました。



 ◆『ドン・キホーテ』より
音楽:ミンクス、 振付:プティパ

(ニーナ・アナニアシヴィリ&アンドレイ・ウヴァーロフ、全員)


ドン・キホーテの華やかな音楽が流れると、会場全体が喜びに包まれました。この音楽はニーナのテーマ曲という感じですね。
2人ともレッスン着姿でニーナは下が赤いチュチュ。普段よりも愛嬌やユーモアに富んだ楽しい踊りを披露してくれました。
例えば、ウヴァーロフが手を差し出して、ニーナがその手に掴もうとする。すると、ウヴァがサッと手を引っ込めて、悪戯っぽい笑顔を見せる。
次は逆で、手を出されてもニーナはお返しとばかり無視して、ニッコリ。
何だか微笑ましいやり取りで、会場から笑いが漏れます。
踊りの方は、長いバランスや、得意のフェッテを大いに見せつけ、最後のコーダでは全員が次々に登場し、素晴らしい妙技を見せてくれました。
コール・ド・バレエの皆さんも、カーテン・コールではお揃いのシャツを着て嬉しそうに登場。

和やかな雰囲気に包まれた良い公演でした。