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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2005年12月09日(金) --

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『ちいさなちいさな王様』

私たちの想像の世界には、ちいさな人たちがよく暮らしています。 とりわけ子ども時代の空想には、ポケットに入るような魔法の生きものがいて、 そんな時間をいつまでも愛したまま大人になった子どもが、 『床下の小人たち』や『ちいさなちいさな王様』のような物語を 私たちに紡ぎ聞かせてくれるのだと思います。

この本に出てくる王様は、 なぜだか、十二月王二世という名前です。 偶然十二月に読めたことに感謝しました。 人さし指ぐらいの大きさですが、幅はたっぷりあって、つまりおデブさんで、 頭に王冠を乗せ、王様らしい真っ赤なローブをまとっています。

そして、「僕」の部屋の壁のなかにある部屋に住んでいて、 いつも退屈しているかと思えば、僕に、思いがけない人生というものを 理解たらしめ、くぐもった気分を吹き飛ばしてくれるのでした。

王様と僕の一番大きな見かけのちがいは、人間は生まれてから徐々に大きくなって、 最後に少し小さくなって死ぬのですが、王様たちは、最初一番大きくて、 少しずつ小さくなっていって、最後にはいつのまにか見えなくなってしまうそうです。

だから今、小さい王様の心は少年なのです。

そのころの僕は、悲しみのあまり、 夜になると、ひとりで街を歩きまわった。
そんなとき、雨が降っていたりすると妙にほっとしたものだ。 というのも、雨が降ると、通りは濡れてもっと暗くなり、 あたりの水たまりに、自分の沈んだ気分がうつっているように 感じられて、それが僕の気持ちをなぐさめてくれたからだ。
水たまりを見ると、僕はなんだかそれほどひとりぼっちでは ないように思えた。
(引用)

王様は、そんな時期に現れたのです。 くまのグミ、ドイツでは「グミベアヒェン」というそうですが、 それが王様の大好きなお菓子。 背丈と同じぐらいのぷよぷよしたグミにかぶりつく様子がすてきです。

あるとき王様は、「絵持ち」という存在の話を僕にしてくれます。 人が一生の間に見た映像が絵になって部屋にかかっているという説明は、 まるで『めもあある美術館』を想わせて、切ないようななつかしさです。

私も王様に教えてもらったことがあります。 これからはそうすることにします。
「どうなの?」と聞かれれば、
「ばかにいい」と答えてあげるのです。 (マーズ)


『ちいさなちいさな王様』著者:アクセル・ハッケ / 絵:ミヒャエル・ゾーヴァ / 訳:那須田 淳 / 出版社:講談社1996

2002年12月09日(月) 『アタゴオルは猫の森』
2000年12月09日(土) 『ミミズクとオリーブ』

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