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そこにいるはずの「気配」を予感させる英国紀行。
著者は、妖精の井村君江・妖怪の水木しげるという、 まさしくそれぞれの分野における女王と王からの 祝福とともに、この旅を物語る。
タイトルにもある「魔女」や「妖精」を紹介するために、 巻頭で、英国の妖精と日本の妖怪の差異について、 両氏からの見解や資料をふまえた論考が示され、 単なる出たとこ勝負の撮影旅行とは趣を異にしている。
そういうことを頭に入れたうえで、 ゆく先々で歓迎の虹がかかったという英国・スコットランドの 不思議を、ともに旅する。 果ては巻末の「英国の魔女・妖精・ファンタジーの歴史」年表も ちらちらと見ながら、丘陵をさまよう。
「レイライン」(光の直線路)のことはどこかで聞いたことがあったが、 こうして紹介されると非常にリアルだ。 フランスの「モン・サン・ミッシェル」と、イギリスの西端にある 「セント・マイケルズ・マウント」の酷似。 さらに、キリスト教によって光の天使聖ミカエルとなった ギリシャ神話の太陽神アポロンがまつられたデルフォイまでが 一直線のレイラインで結ばれており、その途上に ストーンヘンジなどさまざまな遺跡が点在しているという。
アーサー王の生地とされるティンタージェル城。 スカイ島の、妖精と結婚した城主の物語。 マン島のフェアリー・ブリッジでは、妖精に挨拶をして渡る。
イギリスには三度も行きながら、いまだ訪れたことのない 世界の謎めいた奥行きに、ため息をつく。
書き下ろしということで、『ハリー・ポッター』と 『ロード・オブ・ザ・リング』の舞台についても ページを割いている。
ファンタジーに限らず、トマス・ハーディやロザムンド・ピルチャーの 舞台も紹介されていて、興味深かった。 (ピルチャーは『シェルシーカーズ』を引用) 巻末には旅のインフォメーションも充実しているし、 参考文献のリストも60冊以上にのぼっている。 趣味の通じる方なら、これ一冊持って英国を堪能できるだろう。
気配に満ちたあの国に、今度訪ねたときは どこまで入り込めるだろうか。 いったい何度、あの国を歩けるだろうか。 (マーズ)
『英国 魔女と妖精をめぐる旅』著者:新美康明 / 監修:井村君江 / 出版社:智恵の森文庫(光文社)2004
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管理者:お天気猫や
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