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かの動物語を解する名医、ドリトル先生の家には、 白いアヒルの家政婦、ダブダブが君臨していた。
略称『F氏のアヒル』では、腕の立つアヒルの家政婦「ローズマリー」が、 物語のもう一人の主人公である。 田舎へ引っ越した若手売れっ子作家、 ケヴィン・フレッドウォードのもとへ、ローズマリーがやってくる ところから、物語は始まる。
先日、ドリトル先生の話をしていたとき、同じ趣味の大先輩が 「あの、アヒルの家政婦さんが出てくる漫画、何だっけ」 と振ってこられたのだが、私が知らないというと、 貸してくれたのだった。
さて、ローズマリーがあらわれてからというもの、 ストリートチルドレンを体験し、殺人鬼ホラーが得意だった ケヴィンのまわりに、家族や仲間が増えてゆく。 やがてケヴィンは心機一転の児童書で、作家としてもチャンネルを変えた。 9冊という長い物語のなかで、ケヴィンは人との付き合い方を ローズマリーの示唆から学び、実践してゆく。
最後の最後まで、ケヴィンの跳ばねばならない対人関係の ハードルは高く、その都度コケながら、弱さを思い知り、 子ども時代の傷を乗り越えねばならない。 自分の人生を生きるために。 けれど、そのたびに乗り越えるからこそ、同じ問題はもう訪れない。 このことは、RPGゲームが私達に教えてくれる真理ではないかと 思っている。
順を追って登場するキャラクターたちも魅力的だが、 なんといっても、最初に『家族のようなもの』を形づくるのが アヒルの家政婦で、次が子犬、というのは順序正しい。 その後、近所に人間の友人ができ、元恋人とのあれこれやら、 過去との再会などを経て、庇護するべき子どもや、 かけがえのないパートナーと出会うケヴィン。 ローズマリーの取り仕切る一家の人数は、なんと 増えていったことだろう!
それは夢だというだろうか? でも、私だって信じている。それは法則だと思っている。 自分らしい生き方をして、人と関わることを怖れなければ、 いつか誰のまわりにも、温かいつながりができていって、 居場所も─自分以外の誰にも埋められないような窪みも─ 形づくられてゆくのだと。 庭の犬一匹と、部屋でくつろぐ猫二匹をながめながら、 次はなんだろうかと思うこのごろである。 もし私が逃げていたら、彼らはここにいなかったのだから。 (マーズ)
『フレッドウォード氏のアヒル』1-9 著者:牛島慶子 / 出版社:アスカコミックス(角川書店)1992-1995
2001年11月12日(月) 『小さいとっておきの日曜日(2)』
2000年11月12日(日) 『ハンニバル』 (3)
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管理者:お天気猫や
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