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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年07月31日(木) --

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『カスピアン王子のつのぶえ』

一度は人間界に帰った4人の子どもたち、 ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィが ふたたびそろってナルニアを訪れる。

ただし、その間にナルニアでは数百年の時が流れていた。 4人が治めた頃のナルニアは黄金時代と呼ばれたが、 今は外から来たテルマール人が治めるようになって久しい。 弾圧を受ける「ものいうけもの」たち、 小人や妖精たち。眠ってしまった樹々の精たち。 彼ら「もとナルニア」の者たちの存在を信じる若い王子、 カスピアンを王座につけるため、子どもたちは呼ばれたのだった。 コルネリウス博士のもとで、ひそかに侵略の歴史の真実を学んだ カスピアンは、独裁者ミラース王のもとを去る。

今やアスランそのひとと同じく、はるかな伝説となり、 わずかな人々にかろうじて信じられている ケア・パラベル城の4人の王たち。 その彼らが、初めてナルニアに来た頃の子どもに帰って (タイムラグのおかげで)、ナルニア立て直しに活躍する。 彼らがナルニアへやってくるゲートが、ちょうど「さいごの戦い」と 同じように、駅のプラットフォームなのは興味深い。

廃墟と化したケア・パラベル城に到着した4人には、 その後、長い飢えと疲労の苦しい旅が続く。 世界が変わってしまった今、何を信じればいいのか。 一行の、そしてナルニアの人々の問いかけは、 ルイスが古い民を「もとナルニア」と呼んだように、 二度の世界大戦を経て、大戦前から生きているルイスもまた、 新しい世界になじめないという隔絶感をあらわしているようだ。

終盤は、カスピアン軍と敵軍の果し合いや裏切りなど、 血なまぐさい場面も多いが、そのなかにも、 アスランの周囲ではバッカスたちの陽気な宴が描かれている。 アスランの旗のもとに、アナグマの松露とり、 小人のトランプキン、ネズミの騎士リーピチープといった、 ファンにはおなじみのキャラクターの登場をまじえながら、 新しい伝説が、かたちづくられてゆく。

今回は、子どもたちのうち、末っ子のルーシィだけが つねにアスランの呼び声を聞き、姿を見ることができるが、 他の子どもたちは、最初、アスランを求めながらも なかなかその姿を見ることができない。 物語の最後にアスランが語るとおり、ピーターとスーザンは、 成長してしまい、もうナルニアへ訪れることはないのだ。 その一抹のさびしさが物語に入り込んできたことは、 ナルニアが黄金時代を過ぎてしまったことと絡んで、 終わりよければ、では済まない複雑な読後感を与えている。 (マーズ)


『カスピアン王子のつのぶえ』 著者:C・S・ルイス / 絵:ポーリン・ベインズ / 訳:瀬田貞二 / 出版社:岩波書店1966

2001年07月31日(火) 『魔女学校の一年生』

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