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原題は、『ライオンと魔女と衣装だんす』。 英国の田舎の屋敷にある衣装だんすの奥に、 異世界ナルニアへの入り口がある─という有名な場面で 始まる、シリーズ第一巻。
偉大なるライオン、アスランのもとで、 人間界から来たピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィの 兄弟姉妹が活躍する物語。 善なるアスランをおびやかす悪は、白い魔女。 ナルニアを永遠の冬と化し、魔女の塔には、 石に変えられたナルニアの民が動かぬ彫像となって立ち尽くす。
ところで、悪い魔女と冬、塔というと、新しいファンタジーでは 『レイチェル』シリーズを連想する。 レイチェル第一巻のタイトルにある『滅びの呪文』も、 この白い魔女の十八番である(『魔術師のおい』参照)。 魔導師ラープスケンジャとライオンのアスラン、 彼らと魔女や子どもたちの力関係も、やはりナルニアへの オマージュから生まれたのだろう。
さて、最初にナルニアを訪れるのは、末っ子のルーシィ。 なぜか一本の街灯がともる雪の森に出たルーシィは、 フォーンのタムナスさんに出会う。 やがて全員がナルニアへやってくるのだが、 エドマンドだけは、弱さによって白い魔女にからめ取られている。 本書のテーマとなっている善悪の戦いとともに、 聖なる犠牲と復活に深くかかわるのが、このエドマンド。 他の子たちは、衣装だんすのなかに入ったときも、 扉を全部閉めてしまうのは非常識なこと、という良識が あるのだが、エドマンドだけは、ぴったりと閉じてしまう。 そのあたりも、ルイスの観察眼は抜け目ない。
アスランの力で魔女の力が弱まると、 雪に閉ざされていたナルニアが、春へと変貌してゆく。 その様子は、アニメーションを見ているような躍動感があり、 アスラン復活の喜びと双璧をなす見どころだろう。
今回読み返してわかったのだが、 『ライオンと魔女』でナルニアへの入り口となる屋敷の持ち主、 不思議なできごとに理解を示す老いた学者先生は、 『魔術師のおい』の主人公にしてルイスの分身、 ディゴリー少年であった。 (マーズ)
『ライオンと魔女』 著者:C・S・ルイス / 絵:ポーリン・ベインズ / 訳:瀬田貞二 / 出版社:岩波書店1966
2002年07月30日(火) 『ゴーイング・ウイズィン』
2001年07月30日(月) 『シンプル・マーケティング』
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管理者:お天気猫や
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