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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年07月16日(水) --

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『いまを生きる言葉「森のイスキア」より』

☆生きること、食べること。

佐藤初女さんの名前は、映画『地球交響曲』を観てから 知るようになった。「森のイスキア」という、異国風な 館の名前とともに。 そして、佐藤さんの活動を知ってから、食べることを おろそかにしていては、人は深く生きていけない ということを思うようになった。

佐藤さんは何冊かの本を出されているが、読んだのは 初めてで、扉をあけたとたん、亡くなった息子さんに 捧げられていることを知り、しばし呆然とした。

手書のメッセージとともに、食や暮らし、生き方にまつわる 数行の思いが集約されて、できあがった本。 こころの扉を開く「おむすび」として、佐藤さん直伝の おむすび作りも、写真入りで紹介されている。 巻末には、愛情こもった季節のレシピ集も。

「おいしいものを食べるのではなく、 おいしく食べることが大事」と佐藤さんはいう。 その人のつくった、何ということのないおむすびを、 ひとくち、食べる。それだけで、涙ぐんでしまうほど、 魂がゆさぶられる人が、たくさんいる。 そんなおむすびをつくる人、というイメージが、 読むにつれ、さらに深まった。

これまで、どうしてイスキアという名前をつけたのか、 知りたいと思っていた。 本書にはそのいきさつも、詳しく書かれている。 イスキアとは、イタリアにある島の名で、 ナポリの青年が生きる力を取り戻した故事にちなんだという。 島には修道院の遺跡なども残っているそうだ。

佐藤さんはクリスチャンで、悩みを抱えた人々の 受けとめ場所、再生へのきっかけになる、ふところのような 場所をつくりたいと、強く願った。 もともと、青森県弘前市の自宅で、「弘前イスキア」を 始めたのが、こういう形での奉仕活動の始まりだったという。 その活動によって多くの人と出会い、「森のイスキア」が誕生し、 やがて全国から、佐藤さんのつくる食事と佐藤さんを求めて 見ず知らずの人々が訪れ、そこでの癒しを、次への一歩と するようになっていった。

佐藤さんのいうように、 人はまわりからいくら諭されても、動けない時がある。 自分でどうどうめぐりに気づいて、変わるしかない。 死ぬまで成長をやめない人間の、それは特権だろう。

食べることの重みを考えていると、 ときどき出かける自然食のお店のことを思い出す。 ひとりでも何度か行ったが、一度行くと、また行きたいなと 思う。メニューがいつも変わっているわけではない。 季節の野菜や穀類中心の、やさしいごはん。 そこに行くと、自分をいたわることができるし、 食事によって、大事にもてなされていると感じる。 身体を癒しながら、心や魂までも、しみわたる滋養。

反対に、体調をこわしたとき、スーパーで買った栄養のありそうな 食材をいくら食べても、いっこうに回復しないことがある。 これは青々としたホウレンソウに見えるけど、中身は別の ものなんだなぁ、とがっかりしたりする。

誰かが愛情をこめてこしらえてくれた、身体に必要な生命力が いっぱいにつまった「ごはん」。 人に押し付ける愛情ではなく、流れ込む愛情。 私たちの体は、それをきちんと受けとめる力をもっている。 (マーズ)


『いまを生きる言葉「森のイスキア」より』 著者:佐藤初女 / 出版社:講談社2002

2001年07月16日(月) 『100文字レシピ』

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