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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年07月14日(月) --

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『りかさん』その2

『からくりからくさ』の主人公「蓉子」が、「ようこ」として 登場する、子ども時代の物語。 書かれたのはこちらが後で、他の登場人物たちも 何人かは再登場している(過去の話であるが)。

意志を伝えることのできる市松人形の「りかさん」が、 おばあさんから託され、ようこのもとに来て、 やがてようこの人形として、人形の使命をまっとうしてゆく。 私たちは、『からくりからくさ』の蓉子が身に付けていた 不思議なほどの同調感、そこに触れた者が感染するやさしさ、 言い換えれば他者への寛容性をひもといてゆくことになる。 そして、この物語は、前作が大人(少女)の物語であったのに対し、 「人形」という造形物の「生態」や「記憶」を描いた という意味で、「おもちゃ文学」でもあるのだった。

ようことりかさんの出会いの物語、 ようこの仲良し、登美子との友人付き合い。 雛人形や諸々の人形たちの、感受性の波をつぎつぎと受け、 幻想と怪奇の面も強く描かれているが、 やはり、他者との距離、間合いといったものを学ぶ少女の 物語なのだと思う。その意味では、『からくりからくさ』との 共通したテーマがつづいている。

昨年、ある展覧会で、ラオスの少数民族の刺繍を見た。 そこにはやはり、「背守り」があった。 赤ん坊の衣類の、背中に刺繍された紋様が、 魔よけとなって子どもを守る、その「つもり」になる。 親の目にとどきにくい場所だから、魔が入り込まないよう、 護符をつけておくのだろうか。 「つもり」といえば、人形遊びもそうだろうし、 言い始めると、すべての社会生活が「つもり」になってしまう。 この物語のなかでも大切なモチーフとして登場する 背守りのことを、折に触れて私も思い返している。

※文庫には『からくりからくさ』の外伝となる『ミケルの庭』も収録。 (マーズ)

「りかさん」その1「からくりからくさ」


『りかさん』 著者:梨木香歩 / 出版社:新潮文庫、偕成社

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