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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年06月30日(月) --

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「やまのこのはこぞう」

☆再会の喜び。

ある日、ふっと、思い出す本があります。
本というよりは、その本を読んだときの気持ち。
漠然としていて、言葉には置き換えられない微妙な心の揺れが、
不意に蘇ってくる、そんな瞬間。

秋が深まり、遠くに見える山が色づいてくると、
ひんやりとして、清々しい山の空気が私の周りにも満ちてきます。
車の中にいても、職場にいても、
街の中の雑踏にいても、子供の頃の思い出と共に、
すぐそこに、いなかの山があります。

そして。
もうとっくに、本の題名さえ忘れているのに、
ある本を読んだときの小学生の頃気持ちも、
一緒になって、私の元に戻ってくるのです。

山の中で不意に迷ってしまった不安な思い。
何にも悪いことをしていないはずなのに、
山の動物たちから責められて、
どうなってしまうんだろうという怯え。
得体の知れない葉っぱのお化け。

本の題名も、あらすじもほとんど覚えていなくて、
わずかに葉っぱのお化けの挿絵をうっすらと覚えているだけ。
もちろん、その葉っぱのおばけの名前も分からない。
「えっと。“やじろべえ”に似た名前。」
何もかも分からないのに、
小学校の図書室の空気と共に、私の元に戻ってくる本。
えっと、書棚のあの辺にあったけ。
小学校に行けば、絶対に分かるのにと、
そう思い続けて、長い年月が経ってしまいました。

ずっと後になって、
マーズたちのおかげで、本のことが分かりました。
「やまのこのはこぞう」
かいつまんで、あらすじも教えてくれました。
ああ。
“やじろべえ”に似ていると思っていた名前は、
“このはこぞう”
…微妙に、似ていない(笑)
何と、子供の頃の記憶の曖昧なことか。
それでも、いつかめぐり会えたらいいのにと、
この本との再会をずっと待っていました。

地元の図書館でこの本を見つけ、
やっと、今日、読み返すことができました。
懐かしさと、ついにめぐり会えたという満足感。
何より、本のページをめくりながら、
私は小学生の頃の小さな私との再会を果たしたのです。
(シィアル)

※征矢清(そやきよし)/入手できる作品を一部ご紹介します:
「もっくりやまのごろったぎつね」(新装版)
「ガラスのうま」
「ねこっ原のぶちねこ」
「はっぱのおうち」
「A house of leaves」(「はっぱのおうち」英語版)
「ゆうきのおにたいじ」


「やまのこのはこぞう」 著者:そやきよし / 絵:岡田周子 / 出版社: あかね書房1968(絶版)

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