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英米で広く人気を得ている古典作家や詩人を、 30人、特製のウィットソースで料理したガイド本。
本の裏表紙には、こんなお茶目な宣伝文。
「いまさら勉強する時間もないあなたが 知ったかぶりをしたいなら、この本がお役に立ちます」(/引用)
チョーサーやシェイクスピアから始まって、 桂冠詩人の面々、女流作家たち、アメリカの父ヘミングウェイ。 コナン・ドイルやスティーヴンスン、ウェルズといった 冒険・ミステリの元祖たちも登場する。 トールキンも『選ばれて』いるので、ファンタジーファンも納得。
30人の駈け足人生と作品紹介を読んだところですべてを 記憶にとどめることもできないが、 しかし、なにかは残る。 そのなにかは、読み手によってちがうのだろうが、 ここに登場する誰にも、共通する力がある。 どんな生まれ育ちであろうと、裕福であろうと、 貧しくあろうと(たいていは貧しいが)。
それは、書くことへの意志。 男も女も、何をしながらでも書くことをやめない。 というか、体験したことは端から作品となる。 作家の目で観察され表現される生活そのものが、 広い狭いに関わりなく、場合によっては、読む価値のある名作となる。 誰も、自分とまったく関係のない世界を描いたりは していないのだ。一見荒唐無稽に見えたとしても。 そもそも恋愛感情を描くこと自体、理解しない人には 荒唐無稽なことだろうし。
あくまで勘だが、著者のジョイスに対する特別の思い入れが 感じられる文章もある。
「今日、死後五十年以上たってみると、この頑固で、近眼で、 チビのアイルランド人が、世界で最も偉大な作家の一人と 認められている」(/引用)
それにしても、こうして、30人の作家たちの人生を飛ばし見てしまうと、 つくづくと思う。なんと、因果な職業よ。 名声を得よう、作品を世に知らしめようなどと願わずに、 普通でありたいと願うことこそ、ある意味では、自己充足への 一歩なのかもしれない。 (マーズ)
『とびきりお茶目な英文学入門』 著者:テランス・ディックス / 絵:レイ・ジェリフ / 訳:尾崎寔 / 出版社:ちくま文庫
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管理者:お天気猫や
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