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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2002年05月23日(木) --

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☆いまもって、夢の本屋さん。

私やシィアルやナルシアがそろって高校生のころ、 この地方都市に、ずいぶんとこだわった書店ができた。 新しくできた話題のファッションビルのB1に、 街の老舗書店が出した新ショップ。 いまもって、当地にはあれを超える個性的な店が出ていないと思う。

40坪やそこらはあったと思う。 外国の図書館めいたつくりで、棚の配置は四方の壁と 四角い島のような中央部、高低差のある床。 古っぽいフローリングの床、天井まで作りつけた本棚。 レールの梯子を移動させて、上のほうの本を探した。

SFやファンタジーや、児童文学の豊富さ。 セレクトショップではないけれど、こだわりはあったと思う。 なにより、本に囲まれた地下の空間独特のムードが 私たちを呼び寄せる力を発していた。 奥のほうに当時のカフェバーのようなものもあったのだけど、 利用したことがなかったのは残念。

学生だった私が、そこでそんなにたくさんの本を 買ったというわけではない。立ち読みのほうが多かった。 買うとしても、安い文庫がせいぜい。 オリジナルのマークが入ったクラフト紙のブックカバーは、 大切にとっておいた。

その本屋さんは、数年で閉店した。 やはり、経営としては成り立たなかったのだろう。 何せ、当時はネットだってないわけだし。 ファッションビルそのものの命運も廃れ、いまでは往時の おもかげはない。

あの本屋さんは、時代に対して早すぎたのか、 いずれにしても地方都市での存続は困難だったのか。 その答えはわからない。

その後、書店のあとにはラーメン店が入り、 そこにも私たちは通ったものだった。 そこに夢の本屋さんがあったことを確認するかのように。

本好きにとって、どこかで夢見る理想の書店。 自分に店を任されるなら、こんな書店をつくってみたい。 そういう想像をはばたかせるとき、 必ず一度はさまよってゆくのが、あの地下の ブックショップと、そこにあった独特の匂いなのである。

経営としては失敗だったかもしれない。 けれども、私をはじめ、街の人のなかに遺産を遺したことは、大成功。 あの時代、あの店を創り出してくれた「誰かのパワー」に、 遅ればせながら、感謝をささげたい。 (マーズ)

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